【ネタバレ注意】ガラスの仮面第25巻その⑥【これは本当に君なのか・・・】

      2020/05/30

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いよいよ迎えた「ふたりの王女」初日。
日帝劇場の客席を埋め尽くそうとする観客。
その中に劇団つきかげプラス一角獣の面々。

細川悟 青木麗 春日泰子
沢渡美奈 堀田団長 水無月さやか 田部はじめ

の席順。
春日泰子の生存確認。
そして劇団一角獣の紅一点、二の宮恵子さんの姿がないあたり
なんとも言いようのない距離感を感じる。

観客の話題はもっぱらキャスティング。
姫川亜弓と北島マヤのソーシャルイメージを真逆にした配役に、
ミスキャストや失望の声が。
マヤの実力を知り抜いているつきかげや一角獣のメンバーでさえ心配する。
マヤにとって演劇界への本格復帰がかかっているこの舞台、
そして紅天女に向けて賞レースの俎上に乗るためのこの舞台、
失敗は許されないのである。

そして続々と劇場に入る関係者。
まずは桜小路優。
かつてはマヤの代わりにバイトなどしてくれていた彼ももはや有名人。
若手の実力派俳優として、観客からサインを求められたりする。

そして姫川貢監督と歌子夫妻。
あれだけ心配かけた梅乃ばあやや、
マヤの面倒を見てくれたその他の使用人の方達は招待されないのであろうか。
身分社会である。

そして大都芸能・速水真澄と、劇団オンディーヌ・小野寺理事。

楽屋では出演者たちが準備中。
マヤ、亜弓、それぞれの思いを胸に開演を待つ。

 

幕が開くと裁判のシーンから。
被告はオリゲルドの母、王妃カタジーナ。

従兄のハン=ストラリウス=オーギュスト伯と情を通じ、
王妃でありながら反乱軍に情報を流し、
ラストニア国を危機に陥れた罪である。

王妃の侍女ビルギッダ、宮廷付きの薬屋、
オーギュスト伯の腹心・ロフト=ゴルム、
国王の妹、コルフィンナ、
次から次へと証人が王妃の有罪を証言する。
そして物的証拠も上がり有罪の判決。

王妃には黒幕はわかっている。
愛妾ラグネイドの父と兄率いるゴッドフリード家の罠であった。
しかし頼みの綱の国王すら、
カタジーナとの娘・オリゲルドの存在すら疑う始末。
死刑宣告。

7歳の娘、オリゲルドに自らの無実と、
そして裏にある陰謀、そして第一王女としての誇りを伝え、
断頭台へと登り、自らの最後を娘に見届けさせたのであった。

オーギュスト伯は国外へ逃亡。
ラグネイドは王妃となり、ゴッドフリード家は安泰。
カタジーナの一族は力を失い、
オリゲルドは監獄へと閉じ込められたのであった。

サスペンスに満ちた序幕終了。
なかなか重厚で面白そうな芝居である。
続くアルディスの登場を控え、緊張するつきかげのメンバーたち。

 

第一幕。
ファンファーレが鳴ると、そこはアルディス13歳の誕生日。
各国からの来賓を迎えるはなやかな宮廷。
国王が目に入れても痛くないほどかわいがる
美貌の王女アルディスを次から次へと褒め称える貴族たち。
否が応でも、アルディス登場のハードルは上がっていく。
緊張感が増していく月影のメンバー、
北島マヤの美貌に期待しない観客たち、
そしてほくそ笑む小野寺先生。

舞台袖では登場を待つマヤの異変に気付く共演者たち。
いつもと違うマヤの雰囲気や態度に明らかに驚いていた。

「王女アルディス・・・
 ラストニア国の王女アルディス・・・」

ファンファーレが鳴り、国王とアルディスの登場を告げる声。
立ち上がるマヤ、驚く共演者。
共に舞台に出る国王役の役者も驚きの表情。

舞台に出た王女アルディス。

全ての観客、舞台上の共演者、
つきかげ、一角獣のメンバー
小野寺先生も反応した、
桜小路くん、なぜか立ち見の聖さん、
そして速水真澄。

全員が2ページぶち抜きで登場した
王女アルディスの美しさに度肝を抜かれたのだった。

大騒ぎのつきかげメンバー

「マヤちゃん・・・」

桜小路くんのセリフは8割「マヤちゃん・・・」

驚きのあまり椅子からずり落ちる小野寺先生。

そして完全に撃ち抜かれた速水真澄。

「まさか・・・こんな・・・信じられない・・・真澄様・・・」

そしてその驚く速水真澄をしっかりと視認する水城秘書もおったんかい。

舞台中央で芝居をするマヤ。

「違う・・・
 まるきりの別人を相手にしているようだ・・・
 稽古の時とはまるで違う・・・」

舞台上の共演者はその変わりように驚く。

「水・・・精神安定剤を頼む!」

舞台袖でうろたえる演出家の風魔先生。
この人はオーディションでマヤの実力を見たにも関わらずまだ驚く新鮮な心の持ち主か。

「マヤちゃん・・・
 これは本当に君なのか・・・信じられない・・・」

珍しく他の単語を発した桜小路くん。
これは惚れ直したな。

観客もマヤの醸し出す美しいオーラに包まれ、
出演者たちが褒め称える美辞麗句も
もはや何の違和感もなく受け入れられていくのであった。

 

そして場転。白の監獄の第二場。
監獄で悪態をつくのは侍女ゾフィ。
処刑された王妃カタジーナについたばかりに、
8年もの間オリゲルドにつき監獄暮らし。
不親切な看守に対し怨嗟の声をぶつける。

「はしたない真似はおよしなさい。ゾフィ。」

燭台を手に現れた王女オリゲルド。
その凍てつくオーラに静まり返る観客。

「ラストニア国王第一王女オリゲルドの名をいやしいものにしたいの?」

その鬼気迫る表情にゾフィ役の役者もひきつる。

「この暗さ・・・この陰湿な感じ・・・まるで別人だ・・・」

姫川亜弓をさんざんみてきた青木麗の解説も驚きに満ちている。

燭台を手にしたまま、スポットライトを浴びて客席へ降りる亜弓。

「ラストニア・・・わたしの国・・・
 一年の半分は冬将軍が支配するこの国・・・
 わたしは王女オリゲルド・・・
 わたしの心に永遠に春が来ることはない・・・」

姫川亜弓の登場により、劇場は北国の凍りつく冬と化し、
暖房のきく客席に寒さすらもたらすのであった。

「北島マヤのアルディスにもびっくりさせられたが
 亜弓さんのオリゲルドも目が離せない・・・
 こりゃ今日の舞台どうなるんだ・・・」

舞台袖では名もなき共演者たちが驚きつつ不安を覚えていたのであった。

 

というわけで今回。
ミスキャストと誰もが思った前評判を覆す二人の王女。
北島マヤ演じるアルディスから滲み出る華麗さと美貌。
そしていつもとは異なる暗く陰惨な演技で客席を凍りつかせる姫川亜弓。
月影先生の思惑通り、見るものの度肝を抜いたのであった。

しかしちょっと待て。驚いていいやつと驚いてはいけないやつがいる。

速水真澄、小野寺先生、つきかげ、一角獣メンバー、
桜小路くん、聖さん、水城さん、その他観客、
彼らは驚いてよい。
前評判を耳にし、そして上がったハードルを一気にクリアした二人の演技を
初めて目にしたからだ。

国王役、ゾフィ役、その他の共演者、
演出の風魔先生、その他スタッフ、
お前らが驚くのはどうなん?

散々稽古をしてきたはずである。
当然前日には衣装や舞台も本番さながらにリハーサルをしたはずである。
それなのに初めて芝居を見たかのような驚きようには違和感を覚える。

だとすると、北島マヤならびに姫川亜弓が稽古およびリハでは手を抜いていたのだろうか。
たしかに本番でスイッチが入ったり、無形の力を得て稽古よりもパワーを増す役者もいるだろう。
特にこの「ガラスの仮面」の世界においては
稽古やリハの段取りは一切無視して本番やったもん勝ちが許される傾向がある。
しかし彼らはプロであり、しかも国内最高峰の舞台であり関係者である。
稽古と本番がこれだけかけ離れ、関係者すら驚くという事態は異常であろう。
最後の名もなき共演者たちのセリフにあるように、
当事者ですらどうなるかわからないとのこと。

そうしたことがないように、役者は本番と同じように稽古し、
スタッフは本番と同じように準備し、
演出家は稽古やリハの状況を見定め舵をとるのだ。

そういった意味で演出家の風魔鬼平先生、
もはや無能説が濃厚。

そしてマヤをオーディションに誘った功労者、制作主任の兼平さんは姿すらない。

26巻につづく。

 - あらすじ・ネタバレ注意, 第25巻・冬の星座(3)