【ネタバレ注意】ガラスの仮面第26巻その②【ついにその時がきた・・・】

      2020/06/13

Pocket

「なんだと!?
 あのアルディスを隣国の王子に嫁がせるだと?
 エリンワルド・・・あの敵国へ!」

臣下の提案に怒る国王。
しかし敵国エリンワルドがデンマークと同盟を結んだことによって
ラストニアがそれに立ち向かうことは不可能。
アルディスを嫁がせ敵意を見せず、
その間時を稼いでで国力を養うのが目的である。
もちろんアルディスは人質だ。

そのような噂を耳にしたアルディス。
自身が敵国の人質として嫁ぐこと
父や母と離れることに恐れをなし
侍女のビエナに泣きつくのであった。

「殺されてしまうなんて嫌ー!
 お嫁になんか行きたくないー!」

マヤの芝居が客席に笑いを生む。

「なんて子だ、こんなシーンなのに観客を笑わせている・・・
 稽古の時よりずっといいなあの子・・・」

「稽古の時のあの子は本物じゃないわ。
 舞台の上でこそあの子の本能が目覚めるのよ。」

これまでその本能に何度も敗北してきた姫川亜弓の言葉だけに説得力がある。
そして姫川亜弓自身も、今回の舞台では稽古では見せない演技で
周囲を困惑させていると言うプロにはあるまじき行為を行なっていることを忘れている。

「美しく愛らしいアルディス、
 それがマヤ、あの子のもうひとつの仮面・・・!
 そしてオリゲルド・・・
 これがわたしのもうひとつの仮面・・・!」

せっかくええ感じで芝居していたのに、マヤへの闘争心がぬぐいきれない。
このあたり野望と復讐に満ちたオリゲルドそのものである。

その頃監獄を出たオリゲルドの元にはアルディスからの贈り物が。
素晴らしいドレスに美しい花束。

「二つ違いの私の義妹アルディス・・・
 国王陛下が目の中に入れても痛くないほど可愛がり
 家臣たちもまるで天使を愛するようにその子を愛していると言う
 アルディス・・・私の義妹・・・」

花束を握りつぶすオリゲルド。

誰からも愛されるアルディスに対して
長い間監獄に入れられ虐げられてきたオリゲルド。
大した努力もせず才能だけで演技し最終的に評価される北島マヤと
死ぬほど努力しているのに、才能と親の七光りの人と思われ、しかも勝てない姫川亜弓。
その対比が見事にシンクロし、壮絶なる演技となったのであった。

「歌子・・・ほ、ほんとにあれはわしの娘なのか・・・
 なんだかえらくムードが違うぞ・・・」

素人みたいな感想は姫川貢監督。
役者の芝居を見る仕事のこの方にここまで言わせるのは大したものである。

「殺気ですわ・・・そう・・・殺気・・・
 あの子いつの間にこんな雰囲気を身につけて・・・」

この解説は姫川歌子さん。
北島マヤへのライバル心から夜の街の反社会的行為へと走り、
殺気と復讐の心を宿した娘の姿に驚く。
しかしそのきっかけの一端は
「奇跡の人」でマヤにキスしたあんたにある。
娘が非行に走ったのは、母親が実の娘よりもよその子を認めたからである。

そしてアルディスがエリンワルドのアシオ王子に嫁ぐと言う噂、
アルディスは泣いて嫌がり、国王夫妻も家臣も反対しているという話が
オリゲルドの耳に入った。

「きたわ・・・ついにその時がきた・・・」

人知れずほくそ笑むオリゲルド。
そしてキルゲ将軍を通じて
幼い妹アルディスの代わりに敵国エリンワルドに嫁ぐ決意を表明したのだった。

国王に呼ばれたオリゲルド。
戦争になれば命を取られかねない人質同然の婚姻。
しかし長い間牢獄で暮らした身、怖いものは何もないと言う。

「観客の意識が姫川亜弓に集中している・・・
 そうともこの物語を動かしているのはオリゲルドだ。
 アルディスじゃない・・・」

姫川亜弓の演技にご満悦の小野寺先生。

「誰も気がつかんのか・・・
 この物語、オリゲルドが主人公だと言うことに・・・」

みんな気がついていると思う。
主人公かどうかは知らんが、その役柄や言動的に、
物語を自発的に切り拓いていくのがオリゲルドであることは
誰が見ても分かりそうなものであるが。

「命を捨ててもかまわぬというのか、このラストニアのために・・・」
「はい」
「アルディスのために」
「はい」
「そしてこの父のために」
「はい・・ただ・・・
 国王陛下、一つだけ叶えていただきたい希望がございます。」
「希望?」
「はい・・・たったひとつだけ・・・」

ここで極上の間合いを取る姫川亜弓。
野心をたっぷりと隠したオリゲルドが次に願い出る希望に
何を言い出すのかと息を飲んで待つ。

「そなたが叶えてほしい唯一の希望とはなんなのだ?」
「はい・・・その前に陛下、お答えいただきとうございます。」
「なんだ?」
「陛下、陛下は本当にオリゲルドの父上なのでございますか?」
「な、何を申すのだオリゲルド!」
「お答えください陛下!」

牢に入る前までは自身を可愛がってくれた父王、
牢にいる間もオリゲルドの支えは父の愛情だけであった。
しかし臣下や牢番、貴族や国民たちの間では
オリゲルドは実の娘ではないと噂されていた。

野望と復讐を心に秘めて、父の愛に飢えた娘を演じるオリゲルドを演じる姫川亜弓。
共演者も観客も惹きつけられていく。
そして父から実の娘であると言う言葉と証をもらえれば、
たとえ敵国に嫁ごうとも苦しくなく、
まさかのときは「父上の娘」として死んで行きたいとまでいう。

かつて自身が牢に追いやったにも関わらず
娘の愛と忠誠に心打たれた国王。
ラストニア国王家・レインフォルボア家の家宝の一つである
翼竜の宝剣と首飾りをオリゲルドに授けることにした。
国王しか持つことができない家宝である。

反対する王妃カタジーナ。しかし聞く耳を持たない国王。
そして大臣をエリンワルドへの大使として使わし、
オリゲルドの婚姻を整えさせるのであった。

「運命の騎士よ・・・私の微笑みがお前に見えて?
 お前がどんな悲運を私に授けようとも負けるものですか!
 運命の騎士よ!私の運命は私が決めるわ!
 そして私が作り上げていくの!」

ちゅうわけで今回。
相変わらず見事な姫川亜弓の演技である。
客を引きつける身のこなしや台詞回し、そして絶妙の間合いはお手の物。
そして反社会的行為に身をやつしてまで手に入れたオリゲルドの心が
その演技に拍車をかける。
演技のプロである、両親すら驚かせ、
小野寺先生はご満悦。

しかしオリゲルドの芝居を見ているとその復讐や野望と嫉妬がアルディスに対するものではなく、
北島マヤに対する姫川亜弓の復讐や野望と嫉妬に見えてならない。
そういった意味では、姫川亜弓はオリゲルドをやるにうってつけの素質、というか日常というか、
ようはリアルにオリゲルドな部分があるのだ。
もちろん牢にも入っていないし、皆から大事にされセレブ三昧であるが、
その心の渇望や嫉妬はオリゲルドである。

われわれ読者は結果を知っているし、後出しのようになってしまうが、
アルディスを姫川亜弓が演じた場合、とんでもなくつまらなそうである。

マヤがえげつないオリゲルドを演じるのは簡単に想像できる。
姫川亜弓が表面的に美しい華麗な王女を演じることもできるだろう。
しかし姫川亜弓にはアルディスのような爛漫さや
人を惹きつけても人に囲まれるような素質がない。
美しいが冷たい印象のアルディスになってそうである。

そしてそれでも小野寺先生はご満悦に笑っていそうである。

つづく。

 - あらすじ・ネタバレ注意, 第26巻・冬の星座(4)