【ネタバレ注意】ガラスの仮面第26巻その⑦【ラストニアの賢明なる民よ!】

      2020/07/25

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ラストニアのアルディスが、皇太后の住む北の離宮を病院にするという情報を聞いた
エリンワルドのオリゲルドがとった行動は
12名もの名医をラストニアに送ることであった。
敵国に嫁いだ義姉の優しさに感動するアルディス、
そして貴族や国民たちもオリゲルドの祖国愛に心打たれたのであった。
愛と信頼を込めて、そして王家の一員としての責任を持ち、
感謝の気持ちを書状にしたため、送るアルディス。

対しオリゲルドも平和への願いとアルディスへの親愛の情を込めて
返信を送るのであった。
そして高笑い。

「馬鹿な娘・・・あなたみたいな世間知らずが
 よけいな誇りや責任などを考え始めると
 世の中はよけい混乱するのよ
 早く戦が終わればいいですって?
 まだ終わられては困るわ。
 アルディスあなたは間違っているわ。
 憎しみこそが最も人間を強くするのよ。
 ありがとう。おかげで私は強くなれるわ。
 この世の誰よりも・・・」

医者を送ったわけで戦が終わるわけではなく、
この機会を利用して自身の評判を高めたのだった。
そしてオリゲルドによって支援されている
ラストニア反国王派・赤ユリ党のディーンは、
瞬く間に仲間を増やし、ラストニアの貴族の館を荒らし回っていた。
盗んだ金品は貧しい国民に施し、義賊の扱いを受けているとのこと。
国民たちも彼らをかばい、そして反国王派が次第に組織されて行った。

「たちあがれ市民たちよ!
 国王一家に騙されるな!」

突然客席通路に照明が当たり、一人の煽動者が叫び、
国王への不満と国民の窮状を訴える。
他の通路からも次から次へと国民たちが立ち上がり、
王家へ訴えるべく、武装して城へと向かうのであった。

一方王宮の貴族たちは慌てるばかり。
中には武力での鎮圧を訴えるものも。
この騒ぎを聞きつけたアルディス、胸の奥が熱くなる。

「わたしに・・・わたしに行かせてください。
 刃と刃では血を流すだけ
 王家への愛と信頼を得ることはできません。
 刃に勝てるのは心の底からの愛だけ・・・」

ユリジュスを従えるとバルコニーへ向かい、国民と対話しようとするアルディス。
必死に止めようとする貴族たち。

「おい・・・アルディスは何をやるんだろう?」
「それより・・・マヤの表情見てみろよ
 あれ演技って顔じゃないぜ。本気って表情だ・・・」

マヤの演技が気になるのは劇団一角獣の堀田団長と細川悟。
これまで何度も共演し、マヤの実力を十分に知っているにも関わらず
またしても度肝を抜かれてしまう。
そんなんやから、劇団一角獣はつきかげの下部組織に成り下がってしまったのだ。

「一体どんな演技をやるつもりなんだマヤ・・・」

麗は一番付き合いが長く深いくせに、
マヤの演技の底を知らない。

「おばあさまは言ったわ。
 私はこの国の光になれって・・・
 光の王女になれって・・・!
 バルコニーの扉を開きなさい!」

階下には大勢の国民。
国王への怒り、戦の苦しみ、生活の困窮、
それらに向かい、アルディスは微笑みを持って対峙する。
その表情に吸い込まれた観客。
麗、さやか、堀田団長、
速水真澄、水城さん、小野寺先生、桜小路くん、
そして姫川亜弓。

「ラストニアの賢明なる民よ!
 騒ぎ立てるのはよしてください!
 わたしは王女アルディスです!」

そして現状を訴え説得するアルディス。

  • 国王は体が優れずここへ出られない
  • 王家は愛する国民のことを忘れているわけではありません
  • 国民が苦しんでいることはよくわかっています
  • 戦が長引き国民に苦労を強いているが、このままにしようとは思っていない
  • 今しばらく耐えてください。
  • 王家とわたくしはあなたがた国民を愛しています。その愛を信じて欲しいのです!

結局、何も変わらず与えられず。
その愛によって説得されてしまう国民。
そして騒ぎは収まり、自分たちに口を聞いてくれたアルディスをたたえ
歓呼の声に変わって言ったのである。 んなアホな。
しかし場内の観客たちもラストニア国民になったかのような気分になり、
アルディスの言葉と態度に感じ入っていたのである。
そこで幕が降りる。一幕終了。20分の休憩。

予想以上に重厚な第一幕が終わり大満足の観客たち。
もっぱらマヤ演じるアルディスの美貌と、
亜弓演じるオリゲルドの惹きつける芝居に
観客たちは夢中なようである。
その評判をタバコを吸いながら聞き入っている速水真澄。
そこに現れたのは自販機に飲み物を買いに来た桜小路優。

「大都芸能の速水さん」

「やあ桜小路くん
 最近は素晴らしい活躍ぶりだね。
 あちこちで君の評判はきいてるよ。」

「ありがとうございます。
 速水さんにそう言っていただけるなんて恐縮です。」

無言になる速水真澄。

「随分と背が伸びたのだな。
 いつの間にか俺と肩を並べるまでになっている・・・
 もうすっかり青年だ・・・・
 昔北島マヤと付き合っていた頃はいかにも少年だったのに・・・・」

マヤを見るかのように桜小路くんをジロジロと見る速水真澄。
そっちも興味あるのか。

「楽屋へは行かないのか?」

「いえ僕は舞台を観に来ただけですから。
 失礼します」

無駄がらみした結果、スルーされる速水真澄。

「いつの間にか青年・・・か
 そうだないつの間にか大人になっていたのだな・・・
 チビちゃん君もいつのまにか・・・」

要るか?このくだり。
会話から察するに、桜小路くんはオンディーヌ所属ではなくなったのだろうか?
であれば「大都芸能の速水さん」というよそよそしい呼びかけや、
しばらく見ないうちに背が伸びたというのも理解できる。
もちろんそれは、子供だと思っていた彼が
身長だけでなく、いろんな意味で自身と肩を並べることになったという
速水真澄の焦りの描写に他ならない。

そして第一幕が終わったマヤ、心は平穏そのもの。
速水真澄の焦りなど知る由もなく、
ただただ紫のバラのひとへの思いを高めていた。

マヤにとっては大事なこの芝居。
北島マヤは姫川亜弓を超えられるか?
超えられないまでも同等の力量を示せば、
演劇界、そして紅天女への道が開くのだ。
そして始まる第二幕。

 

アルディスは王女としての責任を真剣に考え行動に移した。
アルディスの提案により、飢えたものや失業者には食料が施され、
アルディスの願いは国王を動かし、税は据え置き。
議会はハーランドとの戦を停戦に持って行くべく議論。
そして銅山の権利の半分と引き換えに、資金や技術の援助をする条件を持ち出す。

しかしハーランドはラストニアが信じられないためこの申し出を断った。
そんなハーランドの国王に対し親書を送るアルディス。
愛と信頼と、平和への願いを強く込めて。
すると返事は、ハーランドの建国際にアルディスを招きたいというものであった。

当然これは罠であると止める周囲。
ハーランドはラストニアを試しているのだと。

「行きましょうハーランドへ。
 私が行かなければラストニアはハーランドを信用していないも同じこと。
 信じてほしければ信じなければ、そうでしょう?」

愛と微笑みだけを武器にするアルディス。
マヤの芝居に観客は魅了される。(何度目やねん。)
そして舞台袖では白目でマヤを見つめる姫川亜弓。

「マヤ、私のライバル・・・
 思い通りあなたは素晴らしい人だわ。
 最後の幕が降りるとき、観客はどちらをみているか・・・?
 私が知りたいのはその瞬間・・・
 あなたか・・・わたしか・・・
 マヤ・・・あなたには負けたくない・・・!」

 

というわけで今回。
アルディスの見せ場盛りだくさん、そしてそれを見ておかしくなる姫川亜弓。

姫川亜弓はいつからこんな人になってしまったのであろうか。
誰もが羨む環境、才能、そして努力する力を持つにもかかわらず、
その正体は承認欲求の塊である。
一つには親の七光りと思われることを極力嫌い、
自身の実力を認められたいということがスタートであったであろう。

そしてもう一つはやはりマヤと出会い、
なんども敗北を味わった(と本人は思っている)ことから
マヤを一方的に敵視し、マヤに勝ちたいと思っているのだ。

しかしマヤ本人は、既定路線的に紅天女を競うライバルであるとはいえ、
舞台においては亜弓との勝負を全く意識していないのである。
それがマヤの芝居をニュートラルにし、さらに引き立てるという皮肉。
そしてそれを見た姫川亜弓はさらに闘志をかき立てられ、おかしくなってしまうのである。

第27巻につづく。

 - あらすじ・ネタバレ注意, 第26巻・冬の星座(4)