【ネタバレ注意】ガラスの仮面第28巻その②【思い出に付き合ってくれてありがとう】

      2020/10/18

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ある日マヤ宛に手紙が届いた。
差出人の名前はなし。
中には舞台のチケット。
「アンナ・カレーニナ」S席

「わ!すごいS席じゃないか。
 誰かが招待してくれたんだよ!」

「誰なんだろう?
 あたしにS席なんてプレゼントしてくれたのは・・・
 紫のバラの人だったら花が添えられてあるはずだし・・・」

「そこの劇団か事務所がお前にってくれたんじゃないかい?
 ほら!招待客ってやつ。このあいだのマヤの舞台見てさ!」

かつて大河ドラマに出て注目を浴びた人気女優。
没落追放されたとはいえ、話題の舞台に出演した女優である。
にも関わらずほいほいおびき出されたマヤ。同居の麗もなんの疑いもない。

のこのこと向かったのは大劇場。
久々の観劇に少々テンション上がるマヤ。
開演五分前、隣の席は空いている。

そして開演のベルが鳴ると隣に人影が。

「速水さん・・・!
 どうしてあなたがここへ・・・
 あなただったんですか?この席をプレゼントしてくれたのは・・・!」

「こうでもしなければ君は俺に会ってはくれまい。
 立つな!もうすぐ舞台が始まる!」

席を立とうとするマヤの手を掴む速水真澄。

「その手を離してください。
 今度は一体また何を企んでいるんですか?」

「企む?君はいつも俺のことをそんな風にしか見られないのか?」

「ええ・・・今までが今までですから・・・
 さあ手を離してください。」

「君がここを逃げないと誓ったらな。
 座りたまえ。舞台が始まる。」

観念したように座るマヤ。
しかし速水真澄は握った手を離さない。

 

その頃大都芸能では軽めの事件が起きていた。

「お見合いですって・・・?あの方が・・・!?」

水城秘書の元に集まりあたふたしている女性社員5名。

「私たちもうショックで・・・」
「真澄様がどこかの有名な財閥の令嬢とお見合いなさるってすごい噂ですのよ。」
「会長であるお義父様が大乗り気なのですって!」
「真澄様に憧れている女性も大勢いるっていうのに」
「でも会長のお気持ちには逆らえないわねきっと」

噂を聞きつけて側近中の側近である水城さんに問い合わせたのだろうか。
しかし水城さんにとっても寝耳に水。

「なんですって!ばかな・・・!そんなばかな・・・!」

青ざめ、冷や汗を流す水城さん。
「ばか」と二回も言ってしまうほどか。
そして水城さんもその他の女性社員も
今まさにこの瞬間、若社長が拉致にも似た行為を行なっているとは知る由もない。

 

その頃、マヤのアパートへ電話が。
マヤは速水真澄に掠取されたため麗が電話に出る。

「アクターズ・スタジオ?
 はい、劇団つきかげの青木麗ですが・・・
 なんだって!?月影先生が失踪・・・!?
 行方不明に・・・!?」

「失踪」「行方不明」というパワーワードが月影先生にふさわしい。

 

劇場では相変わらず手を握られたままのマヤ。

「手を・・・離してください速水さん
 あたし・・・逃げませんから・・・」

しかし強く手を握り返す速水真澄。

「その手を・・・離してください速水さん
 ひきょうです、舞台のチケットであたしをこんなところへ呼び出して!
 いったいどんな魂胆があるんですか?」

「君が今日この後俺に付き合ってくれると約束するならこの手を離そう
 君に嫌な思いはさせない。約束しよう。
 承知してくれ。頼む。」

強引だが真剣でいつもと違う速水真澄の雰囲気に押されたマヤ。

「わ・・・わかりました。
 わかりましたから速水さん、その手を離してください。」

手を離した速水真澄。
マヤはまだ胸の鼓動が止まらない。

芝居が終わり、劇場を後にする二人。

「4時前か。お茶でも飲みに行こうか。
 どこでも君の好きなところへ連れて行くよ。どこがいい?」

喫茶店へ行った二人。
マヤの前には、ケーキ、タルト、プリン、パフェ、モンブラン、
ありとあらゆるスイーツが。

笑う速水真澄。

「何がおかしいんです?」
「どうぞ遠慮なく召し上がれ」
「もちろん遠慮なくいただきます。」

おごりだからとがっつくマヤ。

「かわいいケーキがあるんだな。色も形も。
 たいてい女の子はこういうケーキが好きなのか?」

「ええまあ・・・」

「そうか。
 仕事以外のことは何も興味がなかったからな。
 今日の舞台気に入ってもらえてよかった。」

強引に誘い手を掴んだかと思えば
だまりこむ速水真澄に違和感を覚えるマヤの心の声。

「どうしたんですか?
 今日のあなたはヘンですよ。
 いつもと違う・・・なんだかちがう・・・」

強引に誘う、理不尽なまでにスキンシップ
茶化す、いきなり黙り込んで考え込む
まあ読者から見れば平均的な速水真澄である。

喫茶店を出ると、速水真澄は運転手に帰るよう指示。

「少し歩かないか、チビちゃん、
 たまには散歩もいいだろう。」

「速水さんと散歩!?このあたしが」

マヤの心の声も速水真澄っぽくなっとる。

今後の出演予定、役どころなど話しながら歩く二人。
偶然か、予期してか、区立文化会館にたどり着く。

「星を見ないか?チビちゃん。」

「星?」

会館にどんどん入って行く。

「投影室はどこですか?」

「五階だが今撮影中で・・・
 おやあんたは」

「やあおじさん」

「速水の坊ちゃんだね。覚えてるよ。
 やっぱりそうだ。昔よく来てたものな。」

会館の人と旧知らしくとても朗らかな速水真澄。

「えらく愛想がいいんですね?
 あんな速水さんはじめて」

「俺が愛想がよくちゃ不思議か?」

そして連れられて行った部屋に入るとそこは満天の星であった。

「プラネタリウム・・・」

「子供の頃よくここへきたんだ。
 満天の星・・・宇宙の大きさが好きだったんだ。
 ここにくると自分がどんなにちっぽけな存在か思い知らされる。
 どんな悲しみや悩みも考えているのが馬鹿らしいほど小さなものに思えて来る。
 どんなときでもここへくれば心が大きく軽くなった。
 どんなことにでも耐えられそうだった。」

星を見上げるマヤ。

「速水さん・・・
 ここにいると宇宙空間に浮かんでいるみたい・・・
 なんだか自分がゴミみたい・・・なんてちっぽけな存在なのかしら
 圧倒される・・・圧倒されるわ・・・!」

そして館内の照明が灯る。

「思い出に付き合ってくれてありがとう」

「いいえ・・・」

「ここへ連れて来たのは君が初めてだ」

先ほど受付にいたおじさんが速水真澄の元へやって来た。

「よう!どうだった?久しぶりのプラネタは。」

「昔よりずっとすごいですね。」

「最新式の機械だからな。」

「ちょっと操作室を見てきていいですか?」

「おういいとも!」

離れて行く速水真澄。

「あんた、あの人の妹さん?それとも姪御さんかの?」

「いいえ」

「わしゃあいつがここへよくきていた頃、
 機械の操作や星の解説をしておったんだ。
 小学生の頃からよく来とったな。高校の時も何度か。
 いつもひとりでひっそり観に来とったもんだ。」

意外な速水真澄の過去を聞く。

「いつだったか投影が終わると
 誰もいなくなった場内の隅っこに一人だけポツンといたんだ。
 見ると喧嘩でもしたのか、身体中にアザ作って
 悔し涙に目を赤くして身動きもせずに黙って突っ立っとった。
 それからおっかさんが亡くなったときもここへきとった。
 隅っこで声を殺してないとったよ。
 それが今はあんないい大人になって・・・」

「速水さん・・・信じられない・・・
 あの速水さんが子供の頃ここで一人でベソをかいていたなんて・・・
 小学生の頃から何度も何度もここへきて・・・
 どんな思いを抱いてこの満天の星の下に立っていたのかしら
 圧倒されるような星の群れの中で・・・・」

 

というわけで今回。
なんらかの法律に抵触しそうな速水真澄の行動がやばい。

彼の真意としては

  • 11も年下のマヤに自身が思いを寄せていることには十分すぎるくらい気づいている。
  • しかしこれまでの経緯もあり、自身の思いや、自身が紫のバラの人であることを告げるのは怖い。
  • そんなおり、義父から見合いを命じられ焦っている。

という状況なのだが、そこでとった行動が
観劇を餌にマヤをおびき寄せ、
強引に手を握って、この後、夜まで付き合うことを約束させ、
自身の思い出の地に連れて行き、
要所要所で無言になりマヤを戸惑わせる

というなんとも煮え切らない行動。
仕事以外はほんまにポンコツなのだろうか。

それと月影先生が失踪、行方不明て。
前回事務長と医師の会話を聞いて自身の立ち位置を理解したのか。
自身の病状は今更わからないはずもないし、
講師の仕事ができなくて迷惑かかるのも、昨日今日の話ではないだろう。
ほんまに迷惑と思うなら、事情なり行き先を告げて出て行けばいいものを
失踪されたらなお大迷惑。
なんなら自身を邪険に扱った奴らへの意趣返しとも取れる。

往年の大女優、健在である。

つづく。

 - あらすじ・ネタバレ注意, 第28巻・紫の影(1)