【ネタバレ注意】ガラスの仮面第28巻その④【一生影でいるしかない・・・】

      2020/11/03

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山間を行く夜行列車。

「お疲れになりませんか?奥様」

「いいえ源造。
 それよりお前の方こそいつも世話をかけますね。」

源造さん久々の登場。
おっさんの記憶が確かなら、
劇団つきかげ研究所が潰れて
月影千草を養うために姿を消して以来だろうか。

「いえわたくしは奥様のお供ができるのでしたらどこまででも」

「ありがとう、おまえのその言葉にわたしは
 長い間甘えてばかりきましたわね。
 感謝していますよ。」

源造さんもはや遠回しに愛の告白。
そしてその無償の愛を利用してきたことを暴露する紅天女。

「いいえ奥様、わたくしはおそばにいられるだけで・・・」

源造さんの心の声が哀しい。

「さ、長い旅です。
 少しお休みください。」

「尾崎一蓮・・・
 私に紅天女の命を与えてくれた人。
 紅天女のふるさとへ行こうとしているのですよ、一蓮・・・
 あそこに行けばあなたに会えるような気がする・・・一蓮・・・」

源造さんへの感謝を口にしたその舌の根も乾かぬうちに
一蓮への思いを心に抱く紅天女。
源造さん報われない。

山間を進む夜行列車。
紅天女のふるさとは、昼間の新幹線とかでは行かれへんのか。

 

そして次の登場人物は速水真澄。
速水真澄の日常の一コマごとに彼の心の声が語られる。

陽光をあびる大都芸能社屋。

「待つつもりでいた・・・」

デスクの上の書類と電話

「待ち続けていようと思った。
 大人になるのを・・・」

電話する速水真澄と怯える部下

「けれど真澄、それでどうなるというのか」

会議で発言する速水真澄

「あの少女は決して俺のやったことを許しはしない・・・
 憎しみの火が消えることはないだろう」

社内を行く速水真澄。
威厳に打たれる男性社員と、心ときめかす女性社員。

「これ以上どうなるというのか」

速水真澄の脳裏に浮かんだマヤの笑顔。

「正直で素直で信じられないほどの情熱を秘めているあの小さな身体」

一流ホテルの外観

「あんな少女は初めてだ」

パーティーに列席する速水真澄。

「あの少女に何かあるたびにどうしようもないほど惹かれている自分を知る・・・」

列席者に囲まれる速水真澄

「この俺が・・・なんてことだ」

白目を剥き無機質な表情でカクテルグラスを持つ速水真澄。

「だがどうなるというのだ?真澄
 俺は一生影でいるしかない。影でいるしか・・・!」

そしてそんな彼の様子の一部始終を
「真澄さま・・・」
と複雑な表情で見ている敏腕秘書の描写もセットである。

とまあ、彼がいかに日常、上の空で生きているか
本当に仕事ができるのかどうか実に疑わしい。

 

そのころマヤ。
TVに映画に舞台。
現代っ子に時代劇に令嬢役に悲劇の恋人オフィーリア
「ふたりの王女」での好評を受けて
出演依頼が殺到している。

「ああ・・・どれに出演すればいいんだろう
 あたしにふさわしい役ってなんなんだろ・・・?」

出演作品を選べる立場になったマヤ。
しかし安穏とはしていられない。
紅天女候補にカムバックするための期限はあとわずか。
出演できる回数は限られているのだ。

「つぎの芝居が勝負・・・!」

 

その頃ついに速水真澄も腹を括った。

「どうだ真澄、決心はついたか?
 見合いの日取りを決めてもいいな。」

「・・・・・・
 ええ、お義父さん・・・」

一生影でいる決意をしたのだろうか。

 

マヤ含め、中心人物が様々な決意や行動を起こす中、
新しい人物が登場する。
某所、大沢演劇事務所では社長と演出家が激しい口論を繰り広げていた。

「冗談じゃない!この芝居の全てをぶち壊す気ですか?
 美森ジュンにこの役ができるわけがない!
 どうしても美森ジュンに演らせるっていうのなら
 俺はこの芝居の演出を降りる!」

「口を慎みたまえ黒沼くん。
 美森ジュンはうちの事務所で一番の売れっ子なんだぞ!」

「しかしあれは・・・
 あの役はあんなタレントにできっこあるものか・・・!」

「演劇界の鬼才黒沼龍三・・・
 その才溢れるあまり周囲との摩擦が絶えず、
 五年間ものブランクを余儀なくされた。
 今また君はここで再起のチャンスを棒に振ろうっていうのか!?」

「社長!たとえどんなことを言われたって
 失敗するとわかっている舞台にむざむざ力を貸す気はありませんね。」

「美森ジュンだと客が呼べるんだ!」

「役者の才能を観る目にかけては私の方が上だ!
 あんなアイドルタレントにこの役ができるものか!」

「君は興行というものを考えたことがあるのか。
 失敗というのは客の入らん芝居のことだ!」

演劇界の鬼才黒沼龍三。のっけから熱くそして穏やかでない登場である。
そして全く登場していないのにディスられまくりの美森ジュン・・・

二人の口論は事務所中に響き、事務所の人たちも口々に噂する。

  • 鬼才黒沼龍三、五年ぶりの舞台か・・・楽しみだな
  • 黒沼先生は役者の自分でも気づかない才能と力を引っ張り出す名人だ
  • あの気難しさと我の強さがなければもっと出世していたろうにな
  • 凝り性で少しでも自分の気に入らないことがあると絶対にOKしない
  • 役者やスタッフをこき使う。予算など御構い無しだ。
  • スター役者を降ろしたり、時には開演一週間前に役者を替えたりする。
  • 映画界の大御所、嵐乱子が黒沼先生と喧嘩して開演一週間前に舞台を降りた
  • だが今度ばかりは黒沼先生の肩を持つ。美森ジュンじゃこの役は無理だ。
  • いや・・・この役を演れる役者はそういやしない
  • 難しい役だぜ。なにせ人間の役じゃないんだからな。

となかなかの評判の人物。
演出力には定評あるが、周囲と衝突が多い。
劇団オンディーヌの小野寺理事とは真逆のタイプの演出家である。
なにせ、小野寺先生は演出はせず、政治力だけで仕事を勝ち取ってきた人だ。
映画界の大御所、嵐乱子って
その名前を聞く限りその大御所にも問題がありそうだ。

「それほどまでにいうのだったら勝手にしたまえ!
 ただし!客の入りが悪くて舞台が失敗したら
 君に責任を取ってもらうぞ黒沼くん!」

社長室の扉を破壊するほどの力で閉めて退出する黒沼先生。

「ああ勝手にさせてもらうとも!
 この役は俺が探す・・・
 きっとどこかにいるはずだ。
 この役を演れる役者が・・・」

 

ちゅうわけで今回。
マヤと周囲の人たちが様々な決心。
マヤは次の芝居への覚悟を決め、
速水真澄は一生影でいる覚悟を決め、
月影先生は覚悟の失踪。

そしてもう一人マヤの未来を左右する人物が颯爽と登場した。

さらに何より嬉しいのは源蔵さん久々の登場。

かつては役者で大女優の付き人。
そしてボスが表舞台を去ってからも
付き人、執事、運転手、料理人、雑用となんでもこなし、
ボスの生活費や入院費を捻出するための影働き。
月影先生がアクターズ・スタジオでの収入がある間も
いつ倒れてもいいように働いていたのだろうか。
おそらく独身。初老。
役者としての道も断念し、
紅天女にこき使われるだけの人生にも関わらず、
「お側にいられるだけで」と奥ゆかしい。
器用な人だが年齢などから察するに、
なかなか自身の分だけでなく月影先生を養うのも楽ではなかろう。
本人が望み満足し納得しているとはいえ、
一体どんな関係性なのであろうか。
まさに無償の愛であり、
彼の姿こそまさに、「一生影でいる」ということなのだ。
そこのあたりわかってるんか。速水真澄!

つづく。

 - あらすじ・ネタバレ注意, 第28巻・紫の影(1)