【ネタバレ注意】ガラスの仮面第28巻その⑦【あの人がお見合い・・・】

   

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「狼少女ですって?」

「ええ、その芝居をやるために他の出演依頼をみんな断ったのですって。
 もったいないわね。」

劇団オンディーヌにて。
雑魚団員からマヤの次回出演情報を聞いた姫川亜弓。
ふたりの王女では距離は近づいたはずなのに、
人づてで出演情報を聞くあたりまだまだ壁は高い。

「それはすごいわね。」

「でも狼少女なんて北島さんにはお似合いね。」

スター姫川亜弓の機嫌を取ろうとおもねる雑魚団員。

「才能がなければできない役よ。」

毎回のようにトゲのある姫川亜弓に一刀両断される。

「それで公演はいつ?」

「この秋ですって。」

「秋・・・アカデミー芸術祭・・・!」

マヤが自分と戦うために役を選んだことを悟る亜弓。
話題は演出家へ。
鬼の黒沼、問題ばかりを起こして干されているともっぱらの噂。

「黒沼龍三・・・
 すごい人と組むのねマヤさん・・・」

「でしょー?厳しいことで有名な先生よ」

「私が言っているのは才能のことよ。
 黒沼龍三・・・本当に演劇に惚れ込んでいる素晴らしい先生よ・・・
 芝居を大事にするあまり周りに厳しくなり常識を超えたことをやってしまうのよ。
 でもいつも素晴らしい舞台を作り上げていたわ。
 わたしも一度組みたいと思っていた先生よ・・・」

その一度組みたいと思っていた先生は
「ふたりの王女」の映像を見て、姫川亜弓には一切興味を持たなかったことは内緒だ。

「マヤ・・・あの子伸びるわ・・・きっと・・・
 あなたがどんな狼少女を演じるのか楽しみにしているわ・・・」

以前よりもマヤへの想いが近く優しくなったような気はする。

 

その頃マヤ。
狼としての生活もかなり板についてきた。
言葉も廃し、鳴き声や唸り声で感情表現を行うまでに。
食事はもちろん手を使わず
寝息まで犬のようになっている。
さすがの麗も恐れ入った様子。

あくる日の地下劇場の稽古においても
メンバーたちが発声練習を行う中、狼の遠吠えを行う。
それを見て閃いた堀田団長。今日のエチュードは「狼の擬態」
狼として遊び、けんかし、行動するというもの。
周りに積み上げてある箱や椅子は岩場や丘。
草地も茂みもくぼみもある。ここは荒野。
団長の合図で一斉に地に手をつくメンバーたち。
堀田団長、細川悟、田部はじめ、二の宮恵子さんの姿も久々に。
旧つきかげメンバーも全員集合。麗、美奈、さやか、泰子も生存確認。

床を歩き回り、箱や椅子に登る狼たち。じゃれあったりするものも。

「狼の遊び・・・ここは荒野だ・・・」

 

同じ頃、速水邸。

「真澄さま、お時間でございますぞ。
 早くお仕度を。」

朝倉のじいに急かされている速水真澄。

「お見合いの席であまりあちらさまをお待たせするのは失礼というものですぞ。」

見合いの席でなくとも失礼である。
優雅にタバコを吸い、そして火を消す速水真澄。

「今仕度する。じい。」

まだ着替えてすらない。
そして車で某所へ移動。

「真澄さま、お見合いの席で仕事の話はタブーですぞ。
 それから相手のお嬢様に失礼なことのないように。
 何しろ相手の方は・・・・」

「わかっている!じい」

「いいえ!今度の縁談は特別なもの。
 大旦那さまからきつく言われておりますからな。」

朝倉のじい、久々の登場で大活躍である。
水城さんが登場する前は会社においてもお目付役であったが、
あくまでも水城さんは大都芸能社長の秘書。
朝倉のじいは、大都芸能ではなく、速水家の使用人なのであろうか。

そして開かれた見合いの席。
目線の先にはきらびやかな和服の女性が。

「遅くなりました。速水・・・真澄です」

姓と名の間の「・・・」はなんやねん。

 

速水真澄がお見合い開始した頃、狼のエチュードは盛り上がってきた。
田部はじめの腹に噛み付くマヤ。
負けじとマヤに噛み付く田部はじめ。
くんずほぐれつの喧嘩を始める。

堀田団長はさすがに達者である。
カバンの中からあんぱんを取り出し、
一番高く積まれた箱の上に登って雄叫びをあげる。
一同を注目させるとあんぱんを群れの中へ落とす。
あんぱんを巡って格闘が始まる。
最初にあんぱんを口にしたのは細川悟。
マヤが袋の反対側に噛み付いて奪おうとするも払いのける。
すると細川悟の喉笛に噛み付くさやか。もはや殺人技。
そしてその争いを止めるかのようにおもむろに割って入る堀田団長。

「こうやって大勢の狼たちと動いていると
 力の強弱関係がはっきりとわかる。
 弱者と強者・・・積極的な者、消極的な者
 あるものに対しては強者になり、あるものに対しては弱者になる。
 その狼の心の動きが体の動きを作る・・・
 狼少女ジェーンにとって一体何が弱者で強者だったんだろう?
 人間に対しては?悔しさと悲しみと恐れと憎しみ
 それからやがて・・・愛・・・
 ただ一人の人にだけ・・・スチュワート!」

スチュワートは青年学者でジェーンを狼から人間へと教育しようとする。
はじめは憎悪しているがやがて愛が芽生えるのだ。

「この相手役との演技が一番難しいわ
 一体どんな役者がやるのかしら、顔寄せが楽しみだな。
 うまく呼吸が合えばいいけど・・・」

そんなことを考えながら街を歩いていると
偶然高級そうな建物へ、綺麗な女性を連れて入っていく速水真澄がいる。
冷血仕事虫が普段は見せない優しい顔に驚くマヤ。

「気になって?マヤちゃん」

このタイミングの良さはもちろん敏腕秘書水城さんだ。

「お久しぶりね。元気そうで頼もしいこと。」

あんたもや。

「真澄さまに急な仕事で書類を届けにきたところ。
 プライベートな時間を邪魔するのは気がひけるけれど」

「プライベートな時間?
 水城さん、いま速水さんと一緒にいた人は?」

「ああ、あの方・・・
 真澄さまお見合いをなさったのよ。
 今の方はそのお相手。」

マヤの全身を電流のようなショックが駆け巡る。

「お見合い・・・
 あの人がお見合い・・・結婚するかもしれない
 あの速水さんが・・・!ああ、それであの笑顔・・・」

水城さんの説明によると、
この結婚は速水真澄自身にも大都芸能にも
とてもプラスになるもので
会長である速水義父が大乗り気なのだそうな。
そして敏腕秘書はマヤの心をかき乱したままさっていく。

「どうしたんだろ・・・?
 あたし変だ・・・
 なんだか心の中が突然空洞になったみたい・・・
 どうしたのあたし一体?」

 

そんな衝撃を受けた状態でいきなり場転。

「オオサワ演劇事務所公演『忘れられた荒野』
 これより顔寄せを行います!」

黒沼先生自ら司会をする力の入りよう。

「狼少女ジェーン、北島マヤ!」

紹介されるマヤ、衝撃が癒えずか、表情が暗い。

「遅くなりました。」

「おおきたか、ちょうどよかった!
 みんなに紹介しよう。
 ジェーンを人間として教育することに情熱をかける
 青年学者スチュアートに桜小路優!」

「桜小路くん・・・!」

「よろしく、桜小路です」

「桜小路くんが相手役・・・!」

 

ちゅうわけで今回。
速水真澄の見合いと桜小路くんとの共演。
マヤにとっては度重なるサプライズ。

桜小路くんもやはり黒沼先生の眼鏡にかなってキャスティングされたのであろうか。
あるいはマヤがジェーン役をやると聞き、売り込みに来たのか。
姫川亜弓も人づてにマヤの出演情報を聞いており、
この世界広いようで狭いのである。

しかしおっさん一番のサプライズは
細川悟の喉笛に噛み付く水無月さやか。である。

月影先生にスカウトされて劇団つきかげに加入、
もともと演技力には定評があり、
マヤの最初のライバルとして立ちはだかったが惨敗、
劇団はほぼ解散に追い込まれ、アルバイト三昧の生活。
マヤと同い年ということもあってか麗ほどのキャラ立ちもなく、
地下劇場から再起を果たし、アテネ座の公演で大成功を収めたが
稽古場ではおっさんの喉笛に噛み付いているという謎。
細川悟は生きて稽古場を出ることができたのであろうか。

29巻に続く。

 - あらすじ・ネタバレ注意, 第28巻・紫の影(1)