【ネタバレ注意】ガラスの仮面第29巻その①【今も好きなの・・・?】

   

Pocket

「桜小路くんが相手役・・・あの桜小路くんが・・・」

「よろしくスチュワート役の桜小路優です。」

てなわけで遅れてやってきたヒーロー桜小路くん。
お互い下積み時代から、いつか一緒の舞台に立つことを夢見るも
マヤの眼中には芝居のことしかなく、
次に会うときはライバルとして現れることを誓いマヤに別れを告げた。
彼との切ない記憶が蘇る。

「というわけで今日は役者の方々に集まっていただきました」

黒沼先生の司会も耳に入らないマヤ。
黒沼先生のトークも「というわけで」と板についているのが笑ける。

「この作品の主題は一人の狼少女を人間として更生できるように教育する一方
 今の社会が本当に幸せなものであるかを観客に問うものです。
 その中心となるのが狼少女ジェーンと、
 彼女を教育しようとする青年学者スチュワートです。」

「桜小路くん、こんな形で再会するなんて・・・桜小路くん・・・
 こわいわ・・・!この芝居なんだか怖い!」

顔合わせが終わり休憩。
全体は台本読みに入るが、マヤは別室に呼ばれた。
部屋を移動するため廊下に出たマヤ。
すると一人廊下に佇む少女。
マヤの顔を見ると咄嗟に顔を背ける。

「なんだろあの女の子・・・
 どこかでみたような気がするけれど」

「さあ狼の喜怒哀楽をやってもらおうか。
 ここは荒野だ。遊び餌を求めやがて仲間と出会う。
 君のやりたいようにやってもらって構わん。」

さっそく始まる個人特訓。
両手を地面に着くと、ものを転がしたり遠吠えをしたりするマヤ。
その様子を静かに見つめていた黒沼先生。

おもむろに立ち上がると大きな鏡を運び、マヤに向けた。

「これがあたし・・・あたし・・・」

「何をぐずぐずしている!はやく狼の擬態を演りたまえ!」

「ううぅ・・・う・・・
 違う、だめだあたし狼少女じゃない・・・
 なろうとしているだけなんだ・・・なんて無様な格好・・・」

手を叩く黒沼先生。

「よし。もういいぞ。
 北島、鏡って恥ずかしいもんだろ。」

「はい」

「鏡を前にしたとき人間は自分を見つめる観客になってしまう。
 そしてより素晴らしい人物をその中に見ようとする。
 だから鏡の前で人は無意識に演技をしてしまう・・・それが人間だ。
 動物は人間のように羞恥心もない。
 自分で自分の姿を恥ずかしいとおもったりなどしない。
 鏡の前で演技もしない。
 動物が初めて鏡を見て真っ先に感じるもの
 それが今後の君の課題だ。
 狼少女ジェーンも鏡をみて驚くシーンがある。
 よく考えて稽古しておきたまえ。」

黒沼先生の見事な指導。
自由にやらせ静かに見ていたと思うと
咄嗟に欠点をあらわにするヒントを渡し、
そして的確なアドバイスを行い課題を与える。
一語一句も無駄にできず全部書いてしまった。

そして第一回の顔寄せ終了。

「どうもみなさん。
 忘れられた荒野、今日の顔寄せ、紹介もすみ、
 次回からいよいよ本格的に稽古というわけですが
 僕からみなさんにひとつお願いしたいことがあります。」
 それは稽古の間もそうだが舞台が終了するまで
 みなさんがお互いを役の名前で呼びあってもらいたいということです。」

ざわつく一同。

「芝居の間だけでなく普段からこの芝居の空気を作り上げていきたいのです。
 できれば態度もそれにふさわしくあってもらいたい。
 僕もみなさんにそう接するつもりです。」

そして配られた稽古スケジュール。

「ジェーン、君のスケジュールだけ他のみんなとは少し違う。
 君は孤独な狼少女だ。みんなと一緒に稽古はしない。
 君の出番だけ他の役者が君の前に現れることになる。
 ジェーンにとって人間との出会いがそうであったように。」

「黒沼先生・・・・」

 

そして初日終了
マヤが稽古場を出るとそこには桜小路くんが。

「桜小路くん・・・」

久々の対面に話すことを必死で探すマヤ。
稽古終わりの黒沼先生のお願いを早速無視して役名で呼ばない。

「元気そうだね。」

「ありがとう、あなたも・・・」

前よりも背が高くなり肩幅もがっしりして
なんだか男っぽくなった印象。

「黒沼先生に別室でしごかれていたんだって?」

さすがフランクイケメン桜小路くん。
何年も会っていなかったのに、距離と時間を氷解させるトークの持ち主である。

「同じ舞台に立つのははじめてだね。
 君のいい相手役を演じたいと思っているよ。」

手を差し出す桜小路くん。

「あ・・・そうね。いい舞台にしたいわ。」

握手する二人。
その刹那扉が開くと入ってきたのは先ほど廊下にいた女。
さして驚くでもないマヤと桜小路くん。

「う・・・!」

手を握っている二人を見て固まる

「どうしたんだ舞、おいで紹介するよ。
 僕の劇団の後輩で麻生舞さん。
 こちらは僕の昔の友人で北島マヤさん。」

「はじめまして」

「今日は遅くなるかもしれないから待たなくてもいいと言ったのに。
 またママが心配するぞ。」

「ママには電話したわ!
 桜小路くんが送ってくれるなら遅くなってもいいって!
 約束でしょ。今夜はこれから飲みに連れていってね!」

桜小路くんの腕にしがみつく舞。
ただならぬ気配をさっしたマヤ

「あ!あたし今日用事があったんだわ!もう帰らなきゃ!
 じゃ、また稽古でね、お疲れ様、桜小路くん、舞さん」

逃げるようにさっていくマヤ。

「そう・・か、あの子桜小路くんのGFなんだ・・・
 だからああして長い間彼を待って・・・
 きっととても桜小路くんを好きなのね。
 淋しいようなホッとしたような変な気分。
 時間て不思議。人の心も運命も変えていく・・
 でもこれでよかったんだわきっと・・・桜小路くん・・・」

自分の想いが足らずに桜小路くんを追い詰めたにも関わらず
なんかいい思い出風にまとめるマヤ。
ほんまこいつは天動説で生きている。

「どうしたんだ舞、飲みにいく約束だなんて嘘をついて。」

「本当のこと教えて桜小路くん・・・
 オンディーヌの公演を棒に振ってまでどうしてこの芝居に出ることにしたの?」

若干虚ろな瞳の桜小路くん。

「あの子が出るからなのね。
 北島マヤさんがでるからなのね。そうなんでしょ?
 知ってるのよ私・・・ずっと以前桜小路くんがあの子とつきあってたってこと・・・
 好きだったんでしょ・・・?すごく・・・
 お願い教えて・・・今も好きなの・・・?」

「舞、今では彼女とはライバルだよ。
 この芝居に出ることにしたのはスチュワート役が気に入ったからだよ。
 それにこの芝居がおもしろそうだからね。
 さあ帰ろう舞。ママが心配しているよ。家まで送るよ。」

舞の肩に手を回し、去っていく桜小路くんと舞。

 

てなわけで今回。
いろいろめんどくさい。

まず、マヤ。
かつて自身の思いやり不足から桜小路くんを追い詰め、
そして彼に別れを切り出させ、自身は芝居三昧。
しかも一時はアイドル里美茂と付き合っていた。
にも関わらず数年ぶりに桜小路くんに再会すると恐れをなし
顔合わせ中にかつての切ない思い出に浸り、
勝手に気まずくなり、桜小路くんの新しい彼女を見て勝手に納得。
もちろんどちらかが一方的に悪いということはないのだが、
なんだか悲劇のヒロイン気取り。
そういうところが嫌われる理由である。

ほんで新しい彼女、麻生舞。
気持ちはわからんでもないがめんどくさい。

まず、大沢事務所に部外者のくせに
中に入り込んで男を待つという礼儀知らず。
劇団オンディーヌの後輩とは言え、不作法である。
そして私的感情があるにせよ、
役者としては明らかに格上のマヤに闘争心を燃やす身の程知らず。
この後飲みにいくと嘘をつき
さらには彼氏の過去の恋愛をほじくり返し、
今の彼の気持ちを確かめようとする。
この手合いはいずれは「私と芝居とどっちを選ぶの?」となるパターンか。

しかし桜小路くん。久しぶりにも関わらずフランクイケメン野郎。
劇団オンディーヌの芝居を断って「忘れられた荒野」に出演
彼も作品を、役を選べる立場の役者になったということだろうか。

しかし、舞に核心をつかれたときの彼の虚ろな瞳が見逃せない。
そして彼が「忘れられた荒野」に出演した理由は
もちろん役が気に入って芝居がおもしろそうなのも理由だが
理由はそれだけではないであろう。

裏表のないイケメンだった彼も
時の流れを通して嘘を身につけた大人になったということだろうか。

つづく。

 - あらすじ・ネタバレ注意, 第29巻・紫の影(2)