【ネタバレ注意】ガラスの仮面第29巻その⑥【もう一週間も連絡がない・・・】

      2021/01/23

Pocket

「一ヶ月後!」

黒沼先生の合図で継続される時の変化。
部屋に入ってくるスチュワート。
口調が前より柔らかい。
そしてそれを受けるジェーンの芝居も以前より警戒が少ない。

「あら!あの子唸らないわ!
 前はあんなに唸っていたのに」

ジェーンの芝居の変化を唸り声で測る雑魚団員。
唸り声で演じ分けるあたりさすがだが、
さらにおそろいしいのは、この芝居の変化が
マヤの「計算」や「逆算」によるものではなく「本能」によって行われていることである。
そしてその変化を受けて自身の芝居に反映する桜小路君もさすが。

そしてジェーンは置かれた餌を遠巻きに眺める。
物陰から物陰へ、素早く移動する。警戒はゆるめない。

「人間は狼と違って言葉が豊富だ。
 会話できるようになると楽しいよジェーン。」

そして餌にありつくのだった。
スチュワートの敵意のない友好的なセリフを受けての芝居の変化。

そして不意に音を立て立ち上がるスチュワート。
人間業とは思えない速度で物陰に隠れるジェーン。

「よし!帰りたまえスチュワート!次は二ヶ月後だ。」

鬼才・黒沼龍三もご満悦の表情。

「あの目・・・あの反射神経・・・
 それほど警戒心はないがまだ気を許してはいない・・・
 それがよくわかる・・・
 さすがだよ君はマヤちゃん・・・」

桜小路君も心の中でマヤの芝居を分析し大絶賛。
黒沼先生、マヤ、桜小路君、
高次元なプロフェッショナルの芝居の駆け引きにざわつく稽古場。

「つぎ!二ヶ月後!」

扉を開けたスチュワート。
そこには佇むジェーンの姿が。

「僕を待っていた・・・?
 そうか足音、ドアの開ける音、
 ジェーンは僕だとわかっていたんだ。
 そして食事のくることが。
 だからここで待っていたのか。
 これが二ヶ月後なんだ・・・」

鮮やかな芝居の変化に圧倒されるスチュワート。
そして相変わらず片隅でざわめく雑魚団員たち。

「さあ食べにおいでジェーン」

警戒して遠巻きに唸るジェーン

「どうした食べにおいで。
 君の大好物の鶏肉だ。」

跳躍して餌を取ると再度跳躍して離れるジェーン。
スチュワートから離れて鶏肉を食べるジェーン
そしてそれを見つめるスチュワート。

「あれを食べているジェーンを
 くつろいで見ているスチュワート・・・
 さっきまでの緊張感が消えているわ!」

スチュワートの芝居の変化にも雑魚団員たちが反応する。

「あの動きと距離がジェーンの今の心だ・・・
 彼女の中で確実に時が変化している・・・
 負けられない・・・」

お互いの精緻を極めた演技の応酬。
再度ライバル心をむき出しにする桜小路君。

 

その頃
桜小路君の自宅へ電話をかけた奴がいる。
ガールフレンドの舞ちゃんだ。
当然桜小路君は稽古中。自宅にはいない。

「桜小路くん・・・もう一週間も連絡がない・・・
 そんなに稽古が大変なのかしら?
 今まではどんなに忙しくても連絡くらいくれていたのに。
 あの人と稽古場でどんな風に付き合っているの?
 なんだかこわい・・・
 稽古場にくるなっていうからこうしてじっと連絡を待っているのに・・・」

めんどくさい女が発動する。
ただ心配しているのは、一週間も連絡がないからではなく
その上マヤと一緒に稽古しているからである。
マヤの虚像で追い詰められる。
まあ気持ちはわからんでもない。

 

自宅にそんなめんどくさい女から電話がかかってきているとも知らず
スチュワートは三ヶ月目の稽古に突入。

扉を開くとスチュワートの足下近くまで走り寄ってくるジェーン

「ごきげんようジェーン。いい子にしてたかい?」

鼻を鳴らして返事するジェーン

「だめだめ少しはお行儀を覚えなくちゃ。
 おあずけだよ。おあずけ!」

するとスチュワートにすがりつくようになくジェーン。

「ジェーン・・・これが三ヶ月後か!」

先ほど見せた野生の敏捷な攻撃とは異なる動きだ。
ざわつく雑魚団員たち。無言で見入る黒沼先生。

「わかったよジェーン、さあ食事だ」

スチュワートの足元に置かれた餌を食べるジェーン。

「ジェーン、ついに足元で餌を食べるようになったのか・・・」

出来心か、思わず手を伸ばしてしまったスチュワート。
気配をとっさに悟り、再び距離を置いて警戒するジェーン

「やめー!」

黒沼先生の合図

「ようしそれまでだ。
 まあ今はこんなものだな。
 この調子で稽古を積んでいけばもっと上手くなるだろう。
 休憩だ!」

部屋を出て行く黒沼先生。

「二人とも呼吸が合っていてなかなか良かったわよ」
「黒沼先生にしちゃあれ、最高の褒め言葉よ」
「点が辛いことで有名なんだから」

口々に二人の稽古を評する雑魚団員。
ちょいちょい上から批評する奴はなんやねん。

「さし入れよ。海苔巻き食べる?」

「そういえば私お腹ペコペコ・・・忘れてた・・・」

「あらジェーンは生肉以外食べないんじゃなかったの?」

「またそんな意地悪言って・・・都会の狼は食べるんです!」

笑顔で差し入れの海苔巻きを食するマヤ。

「マヤちゃん・・・こうしているとまるっきり普通の少女だ。
 さっきまでの狼少女と同一人物とは思えない・・・
 狼少女ジェーンの仮面か・・・
 演技をしているときは全く別人になってしまうんだね、君は・・・」

今更その感想を言う桜小路君。
そして海苔巻きを差し入れするというのを初めて聞いた。
ちなみに稽古中ジェーンが口にするのは一貫して餌に見立てたボロ雑巾である。
初回の抜き打ち特訓ならまだしも
かれこれ稽古を続けてそこそこの日数が経つにも関わらず
餌は雑巾のまま。誰か他のもの用意してあげてほしい。
リアリズムにこだわる黒沼先生、そこのリアルにはこだわらんのだろうか。

 

そのころ速水邸。
義父と歓談する速水真澄。

「見合いをした相手のお嬢さんと最近は親しくつきあっとるようだが
 どうだ真澄、相手のお嬢さんをどう思うかね?
 女優にはない美しさだろう?」

「ええ・・・とても美しい方だと思います」

「気立てはどうだ?」

「素直で優しい方です。
 いつも僕のことを気遣ってくれます。」

「趣味は?」

「琴の演奏を聴かせてもらいましたがなかなかの腕でした。
 演奏会で何度も賞をお取りだそうです。」

そのほかにもレース編みや刺繍、
メンデルスゾーンやモーツアルトといったクラッシック、
日本画を自分で描く、植物好きで庭や温室でいつも花の手入れといった趣味があるそう。

「芯はしっかりしていて人前では控えめです。
 素晴らしい方です・・・」

「真澄、お前が女性を褒めるのを初めて聞いたな!」

ご機嫌大爆笑のお義父さん。
速水真澄幼少の頃から、
「他人に甘い顔を見せるな、疑ってかかれ」
と鉄拳制裁も辞さない教育をしてきたにも関わらず、
速水真澄の感想を真に受け止めているよう。

そんな相手に本心を語るわけもなかろうに、
人を疑う教育を実践してきたお義父さん自身は
速水真澄のことは全く疑っていないのであろうか。

すると、速水真澄宛に届け物が。

「温室のランがきれいに咲きました。
 ひとときのおなぐさめにでもなれば幸いです。」

噂の女性から届いたランの贈り物。
ランを贈る気持ちとかタイミングとかよくわからんが
終始ご機嫌のお義父さん。

「ほう!見事なランだ。
 きっとあのお嬢さんが手入れなすったのだろうな。
 相手のお嬢さんもお前を気にってくれているらしいな
 よくきのつく優しいお嬢さんじゃないか。」

「ええ、優しい方です。とても・・・」

うつろな速水真澄。
自身が得意とする「紫のバラ贈る作戦」のお株を奪われた
「ランの花贈る作戦」に戸惑っているのだろうか。

 

ちゅうわけで今回。
桜小路君も結構やばい説が浮上した。

とはいえまあ彼はある種、完璧超人の一人。
男前、優しい、気さく、芝居上手い、コミュニケーション上手
そら女子にモテるのも、注目の若手役者として頭角を現してきたのも納得である。

しかし少々浮世離れしている部分もあり、
現在の稽古や過去の言動を振り返ると
激しい内心を隠しながら、そつなく、言いようによっては上辺や外面で生きているようにも見える。
そしてその激しい内心を隠しきれていないときすらある。

具体的には

  • デート中、芝居のことしか頭にないマヤにキレる
  • マヤと付き合っていた里美茂(主役級のスター)にパーティー会場で因縁をつける
  • 速水真澄(自分の事務所の社長)に楯突く

など、常軌を逸した行動実績もある。

しかも、「演技をしているときとは全然違う」などと
マヤと出会ってから何年経つねんというような感想。
途中数年ブランクがあったり、共演者という立場が初めてなのもあるが、
散々「たけくらべ」に始まり見てきたはずなのだが。

かと思えば、敵かと思うくらいの激しいライバル心を見せたり、
芝居に熱いということなのだろうが、
マヤに対しての気持ちのベクトルが不思議である。

ほんでGFの舞ちゃんには一週間も連絡をしないというわかりやすさ。
稽古が忙しいだけではなく、マヤと一緒に稽古しているから
芝居なのか恋なのか、舞ちゃんのことなど疎かになっていうわかりやすさ。
完璧超人の彼だが、マヤが絡むとその辺りの綻びが出てくる。

そういえば桜小路君の自宅に電話して伝言を頼む舞ちゃんだが、
彼女は桜小路母妹とは上手くやっているのだろうか。

かつてマヤと親しくしていたとき
「母子家庭だから」と付き合いをやめるように言い、居留守まで使った母と
「姫川亜弓の方がいい」と否定した妹。
しかし、マヤが大都芸能に入り
スターダムに乗るや否や手のひらクルー。
舞ちゃんはどのような扱いを受けているのだろうか。

速水真澄が義父から徹底的に教育されたように、
桜小路君のそつのないが、ちょっと本心は隠しうわべだけな感じの生き方は
あのヤバ目な母妹との生活から学んだものなのであろうか。

つづく

 - あらすじ・ネタバレ注意, 第29巻・紫の影(2)