【ネタバレ注意】ガラスの仮面第30巻その②【険しいことになりそうだな・・・】

      2021/02/20

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「どうかね黒沼君
円城寺まどかのイサドラ・ダンカンはぴったりだとは思わんかね?
歌えて踊れて芝居ができる。
円城寺まどかをおいてこのミュージカル『イサドラ!』は考えられんよ」

ここは大沢演劇事務所。
ご機嫌の大沢社長と仏頂面の黒沼先生。

  • 円城寺まどかも大乗り気で退団後初の仕事で世間も注目している。
  • この秋の話題を独占する舞台になりそうだ
  • 演出の藤本君は君と違って秋のアカデミー芸術祭を意識して舞台づくりをするそうだ。
  • 大沢事務所はなんとしても今度の芸術祭で賞をとりたいと思っている
  • 君の「忘れられた荒野」に期待をかけていたのだが、ここいらで考え直した方がいいのではという内部の声もあった
  • この秋もう一本公園を打つことにしたんだ。それが「イサドラ!」だ

「芸術祭の参加作品にはもう少し様子を見て
 『忘れられた荒野』か『イサドラ!』かどちらかを決めたいと思う。
 お互い負けないよう頑張ってくれたまえ!」

完全に社長の意向である。
「わすれられた荒野」にとっては逆風でしかない。
大女優を起用した話題作、社長も乗り気とあって、
芸術祭の参加は厳しそうだ

「えー!?稽古場の移動!?」

続けて、「忘れられた荒野」の稽古場では衝撃の通達。
人数が多く、踊りもあって広い稽古場が必要なため、
「イサドラ!」の芝居のために、稽古場を空けるよう言われたのだ。
職員に詰め寄る出演者たちも殺気立つ。

「静かにしろ!
 稽古場くらいゆずってやれ。
 場所が変わったところで演技が変わるわけじゃなし」

「黒沼先生・・・」

しかし代わりにあてがわれた別場所にある「大沢スタジオ」
パチンコ屋の二階で騒音丸聞こえ。
古びた外観。そして小汚い内装。

「ここが新しい稽古場・・・」

「おい!ここ裏が電車の通り道だぞ!」

稽古場の窓を開けるとそこは線路。
電車が通過するたびに轟音と振動。
パチンコ屋からは騒音、外からは踏切の音も聞こえる。

「すごい音・・・
 これからここで稽古しなきゃいけないんだ・・・よし・・・」

意を決したマヤ。電車の騒音に対抗するように発声練習を始める。

「マヤちゃん・・・」

その姿を見た桜小路君も発声を開始。
そして二人につられて他の出演者も発声練習を開始するのだった。

 

その頃大都芸能

「この秋の我が社系列劇場のすべての演目でございます。
 これでよろしゅうございますか?速水社長。」

部下から提出された資料に目を通す速水真澄。

「円城寺まどか・・・か」

「はい、大沢演劇事務所にしては大きな芝居です。
 しかし企画としてはなかなかのものでありますし、
 何より円城寺自身に星歌劇団からの根強いファンが多くついていますから
 観客動員力は大きいと思います。」

「・・・・よかろう・・・」

思案した上、決裁印を押す社長

 

一方大沢演劇事務所では
めんどくさい大女優が炸裂している

「星歌劇団を退団してはじめての舞台ですのよ。
 まわりが注目していますわ。
 私も是非とも成功させたいと思っていますの。」

円城寺さんサイドの事務所のおっさんも口を出す。

  • 照明も舞台美術も振り付けも是非一流の方をお願いしますね
  • 脇も人気と実力のある役者でかためていただきたいですな
  • この配役表の役者達では円城寺まどかを活かすことができませんな

「恋人のイェセーニン役はもっと素敵な方に代えてくださいません?
 この配役表では役不足ですわ。
 イサドラが恋の遍歴の果てに結婚する唯一の相手ですのよ。
 素敵な人でなけりゃ観客が納得しませんでしょう?
 わたしもイサドラとしてのった演技をやりたいですもの。」

配役からスタッフから口を出す大女優。
ちなみに「役不足」というのは間違いで、
「実力に対して、与えられた役割が軽い」という意味である。
そこらへんの細かいことは気にせず、編成にダメ出しまくり。
めんどくさくて、さすがの大沢社長も圧倒される。

 

そして夜。速水真澄は自邸にて電話。
相手は聖さんであろうか。

「なに!?黒夫人の行方が・・・?
 それで黒夫人はいったい・・・
 ほう・・・そう・・か
 あの方らしいことだ・・・」

どうやら月影先生の行方をつかんだのだろうか。
それにしても聖さん、企業調査にマヤの調査、さらに月影先生の調査
忙しすぎる。それとも聖さんの他にも隠密はいるのであろうか

「大沢の他の公演『忘れられた荒野』はとりあえず稽古を続行中・・・か
 予算はどのくらいだ?なるほど・・・」

かねてより気にかけていた大沢演劇事務所の動きも報告を受ける。

「マヤ・・・このままでは君の道は険しいことになりそうだな・・・」

 

そしてあくる日。
マヤのアパートに電話がかかってきた。

「お久しぶりね。元気そうな声だわ」

「亜弓さん・・・?亜弓さんなの!?」

「ええそうよ亜弓です。
 急にお電話してご迷惑だったかしら?」

「ううんいいのよ!何か急用?」

「あなた月影先生の行方について何か知ってらして?」

「月影先生の行方?」

  • 今劇団オンディーヌの小野寺理事がいらしている
  • 口ぶりでは月影先生の行方がわかったらしい
  • 詳しい居場所はご存知ないようだけれど、速水さんが行方をつかんでいるらしい
  • あなたの所に何も連絡はなくて?

何も聞かされていないマヤ。
真っ先に知らせると言った速水真澄に怒りがこみ上げる。

「ところで狼少女を演るのですって?
 あなたならきっとうまくやれるわ。
 頑張ってね。」

「ありがとう亜弓さん。
 もしよかったらあの・・・
 舞台を見てもらえるかしら?」

「ええ、必ず・・・」

言われなくても来るだろう。
実際亜弓さんはマヤの芝居を、紫のバラの人の次くらいにたくさん見てくれている。

「大都芸能の冷血仕事虫速水真澄・・・!
 行き先がわかったらすぐ教えるって言っておいてあの男・・・
 忘れているなんて言わせない・・・
 きっとまた何か企んで・・・隠してるんだわ」

亜弓さんから直接電話がかかって来るほど仲良くなったのに
怒りに任せて大都芸能へ向かうマヤであった。

 
ちゅうわけで今回。
めんどくさい大女優、出演者やスタッフの編成にまで口を出す。
事務所サイドのおっさんも、円城寺まどかを生かすためといって口を出す。
舞台の成功、というか円城寺まどかをさらに売るのが目的である。
大沢演劇事務所は演劇の企画制作を行っているのであろうか。
そして劇場は、大都芸能の所有する劇場を使用するようである。

ややこしいこの辺りの構造を考察して見た。

円城寺まどかの事務所、これはいわゆる芸能事務所であろう。
あくまでもタレントのマネジメントが主体であって
単体で演劇や番組などの制作はできないようである。

これに対し、大沢演劇事務所は演劇の企画制作を行う事務所であろう。
企画を起こし、演出家はじめスタッフを集め、役者を集めて興行を打つ。
黒沼先生や、あるいは藤本夜彦先生、と言った演出家は
過去の繋がりか実績かで呼ばれているのだろう

ただし劇場は所有していないため外部の劇場を使用するが
稽古場をいくつか所有しているようである。
社長が出演者を右から左へと移しているように
劇団かどうかはわからないが、役者も所属しているようである。

ただし、過去に賞を取ったことがないこと、
今回の円城寺まどかの公演が、比較的大きな規模であると言われていることから
決してトップクラスの事務所ではなく
だから円城寺まどかの横暴を飲まざるを得ないのであろう。

そして大都芸能。
姫川亜弓を筆頭に一流のタレント、俳優が所属する芸能事務所である。
自社で演劇の企画制作を行い、劇団も所有、演出家も所属している。
さらには大劇場を複数所有。
全てを自社で賄って興行を打つことができる最強の事務所である。

だとすると、なぜ円城寺まどかのような大物の興行が
大手とは言えない大沢事務所に話が言ったのだろうか。
意外とああ見えて、大沢社長はやり手なのかもしれない。
問題ありとは言え、鬼才・黒沼龍三を起用していることが何よりの証拠かもしれない。

つづく。

 - あらすじ・ネタバレ注意, 第30巻・紫の影(3)