【ネタバレ注意】ガラスの仮面第30巻その③【紫織様・・・綺麗な人・・・】

      2021/03/08

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大都芸能に乗り込んだマヤ。
いきなり社長室をノック。
社長室というものは大体最上階だったり、
一番奥にあったりするものだが
部外者がそこまでやすやすと行けてしまうのが大都芸能。

社長室の内側にはさらにスペースがあり、受付が。

「は?速水社長?社長は今会議中です。」
「会議室はどこですか?」
「お会いになるご予約でも?」
「いいえ」
「では申し訳ございませんがご予約がないとお会いには・・・」
「会議が終わるまで待ちます!」
「ですが社長はこの後もスケジュールがございまして」

まあ当然の対応をする受付女性。
しかしその多忙な社長が、11も年下の少女のためなら
意外と予定がフレキシブルなことなど知るよしもない。

「大事な要件があるんです!会議室を探します!」

問答無用で突入するマヤ。

「あ!ちょっとあなた!
 誰かその子を捕まえて!」

外の騒ぎを聞いて扉が開く

「どうかして?」
「あ!これはお嬢様」

そのころマヤは男性社員に取り押さえられていた。
まあ当然そうなる。

「君!ちょっと!勝手にズカズカ入りこまれては困るよ」
「会議の邪魔はしないわ!出て来るのを待つだけ!」
「社長は忙しいんだ。君なんかにあっている暇はないよ!」

もみ合いの末、壁だか床だかに叩きつけられるマヤ。

「女の子相手に乱暴はおやめなさい!」

マヤが見上げるとそこに立っていた泣きぼくろの女性。

「ごめんなさいね。大丈夫?これをお使いなさい」

上品なハンカチを貸してくれる。

「あの人だ・・・週刊誌に速水さんと一緒にのっていた・・・・
 あの人だ・・・」

「速水さんにどんなご用なのかしら?」

「この人が速水さんのお見合いの相手・・・・」

固まるマヤ。

「何事だ?騒々しい。」

タイミングよく出て来る速水真澄。
まさかのマヤと紫織さんの鉢合わせに、浮気がバレた男のようにうろたえる。
というかそれに近い状態である。

「これは・・・豆台風のお越しか、何の用だ?」
「月影先生のことで話があるっていえばわかるでしょう!?」
「水城君、すまないがあの子を応接室の方へ連れていってくれないか?」
「はい。さ!こちらへ社長は後で話をきくそうよ」
「逃げたら承知しないわよ!」
「大丈夫。台風の直撃を受ける覚悟はできているよ」

アホみたいに笑ったものの、そこに見合い相手がいることに気づく。

「紫織さん・・・」
「私のことは気になさらないで。」

会議へ戻る速水真澄。
別室へ戻る紫織さん。
そして会議室へ行くマヤと水城さん。

「紫織様・・・綺麗な人・・・
 この人が速水さんのお見合いの相手・・・」

口々に噂する女性社員達。

  • 紫織さまいらしていたのね
  • 社長をお待ちなんですって
  • 急に予定にない会議が入ってしまわれたものね
  • 社長とのデートも大変ね
  • これからは陰でも社長のことを真澄様なんて呼べないわね
  • 何しろあいては鷹通グループ鷹宮天皇の孫娘ですもの
  • 私たちじゃかないっこないわ

「水城さん、鷹宮天皇って?」
「あら知らないの?」

会議室へ連れられてきたマヤ。
そして解説を始める水城さん。
もはや説明するために登場したとしか思えない。

  • 鷹通グループのことは知っているでしょう?
  • 世界でも1・2を争う大手広告代理店鷹通
  • その他に輸入・鉄道・デパート・ホテル・運輸・建築・食品と鷹通グループの経営する企業は多彩だわ
  • 中央テレビや中央新聞なども鷹通の系列に入るのよ
  • それら鷹通の企業のすべてをひっくるめて鷹通グループと呼んでいるの
  • 鷹通グループの総帥、鷹宮会長が鷹宮天皇と渾名されている人物で政財界の黒幕とも呼ばれている
  • 紫織様はその鷹宮会長の孫娘よ。お父様は中央テレビの社長

つまりは電通が読売新聞と日本テレビと東急グループを飲み込んだような巨大企業グループである。
建築と食品だけ異色な感じがするが。

「真澄さまのお父様の速水会長は
 昔この鷹宮会長にお世話になったことがあるらしくて恩人だと聞いているわ。
 鷹宮会長からの頼みがあれば死んでも断れないでしょうね。」

勝手に速水会長の生死を語る敏腕秘書。

「何にせよ真澄様が紫織様と結婚なされば
 大都芸能にとってこんな強力なことはないわ。
 だから速水会長は大乗り気なの。」

「速水さんは・・・?」

核心をつかれた水城さん、一瞬真顔になるも例のサングラスで表情を消す。

「大都芸能にとってプラスになる女性を選ぶと以前からおっしゃられていたわ」

「そう・・・そうよね・・・
 大都芸能のためならなんだってやるのよね。
 仕事のためなら・・・速水さん・・・」

そこに入って来る渦中の速水さん
タイミング良すぎるねん。

「待たせたな。さて話を聞こうか。
 ん?どうしたやけに元気がないな。
 さっきまでの威勢の良さはどこへいったんだ?」

「知らぬが花」を体現したような男である。

「月影先生の居場所を知っているんでしょう?教えてください。」

「誰にその話を聞いた?」

「誰でもいいでしょう?
 どうして居場所を隠しているんですか?」

「誰から聞いたかは大体察しはつく・・・
 このことを知っているのはほんの数人だからな
 安心しろ。月影先生は元気にしている。」

「あったんですか?先生と・・・」

「あったのは俺じゃない。俺の部下が探し当てたんだ
 場所は紅天女のふるさと・・・としか今は言えない
 心臓の発作を起こすこともなく毎日元気で暮らしているそうだ
 源造とかいうじいやが月影先生の面倒をみているそうだ。」

じいや扱いされる源造さん・・・

「紅天女のふるさと・・・」

「脚本を書いた尾崎一蓮が子供の頃の一時期を過ごした場所で
 紅天女の舞台のモデルとなった土地だ。
 2月が盛りのはずの梅が5月の終わり頃まで咲いているという不思議なところだ。
 野生の梅が咲き乱れ谷間を赤く染めるほどだという。」

「紅天女のふるさと・・・」

  • 月影先生は自分の居場所を公表するのはやめてほしいとおっしゃった
  • もし人に知られることがあればそこを出て姿を隠すとまで言われたらしい
  • そして君にも居場所を教えないでもらいたいと強く言われたそうだ
  • 来年の春まではな

「わかるだろう?
 来年の春までは・・・だ」

「来年の春まで・・・
 紅天女決定の期限まで・・・!
 月影先生はそれまであたしに会う気は無いんだわ
 もしそれまでに賞を取れなければ紅天女は亜弓さんにゆずられる
 永久に幻になってしまう・・・」

「どうやら『忘れらた荒野』の狼少女ジェーン役で全てが決まりそうだな。
 ところできみはまだ紅天女への1%の可能性を捨てないのか?」

「ええ・・・」

「では俺もその1%に期待することにしよう
 君を信じているよ」

速水真澄のまさかの言葉に驚くマヤ。

「どうしたんだろ・・・?
 今速水さんの言葉が真剣に聞こえた・・・
 この人が本気でそんなこと思うはずないのに・・・」

そら本気の言葉やから何より伝わる。

「・・・・・・・」

この長めの沈黙は敏腕秘書の水城さん。
速水真澄の真意などお見通しとばかりだ。

そして部下からの細則によって会議室を出る速水真澄とマヤ
エレベータに乗り込む。

「紅天女のふるさとって綺麗なところなんでしょうね。」

「そうだな。空気が紅に染まるほどの梅の花・・・
 夜は降るように星がみえるらしい
 プラネタリウムでしか見られないと思っているような星が多く見られるそうだ・・・」

「満天の星・・・」

速水真澄に連れられていったプラネタリウムを思い出すマヤ。

「紅天女のふるさと・・・いつかいってみたいわ」

「俺もだ」

何だか変な感じで速水真澄と仲良く喋っていることに気づいたマヤ。

「あ・・・あたしあなたと一緒になんか行きませんからね!ぜったいに!」

「誰が君と行くといった!?こっちだって子供のお守りはごめんだ」

「あたしもう子供じゃありません!」

「俺は君が中学生の頃から知ってるんだぞ!」

「ちょっとぐらいおじさんだと思って威張らないでください!」

大都芸能ロビーで大声で喧嘩する社長と乱入少女。
その様子に驚く社員たち、そしてロビーで待っていた紫織お嬢様。
座って待っていたのに立ち上がった途端にくらみ、
速水真澄に支えられる。

「ごめんなさい心配かけて、いつもの軽い貧血よ」

日常茶飯事・・・・

「あなたとコンサート行くのを楽しみにしていましたのよ」

熱烈なアピールをしつつも車に乗せられる紫織お嬢様。
その様子を見て立ち去ろうとするマヤ。

「じゃ、あたし・・・これで・・・」

「待ちたまえ
 プラネタリウムで星を見るのは君と一緒に行ったあれが最後だ
 俺はもう行くことはないだろう。
 おそらく永久に・・・」

謎のプラネタリウム卒業宣言をして去って行く。

「今の言葉はどういう意味ですか?
 プラネタリウムで星を見るのは私と一緒に行ったのが最後ですって・・・
 もう行くことはないなんてどういう意味ですか・・・・?」

そして手にしたハンカチに気づく。

「あの人に借りたハンカチ・・・
 速水さんが女性にあんなに優しいなんて初めて・・・
 紫織さん綺麗な人・・・
 鷹通グループ総帥鷹宮天皇の孫娘・・・!」

 

そしてその夜、食事をする速水真澄と紫織さん。
貧血を乗り越えて、コンサートを楽しんだようである。

「真澄さま
 私には一度もあんな顔をみせてくださらないのね。」

「顔?」

「昼間あの少女に見せたような表情ですわ
 とても自然で打ち解けた表情をしていらしたわ」

深窓のお嬢様ながら、そして初登場ながら鋭い洞察力

「そんなことはありませんよ。
 僕はあの少女と大人げなくケンカをしていたんですよ。」

「でも楽しそうでしたわ。
 真澄さま、あなたは本当はとても優しい方なのではありませんの?
 人の噂では冷酷な仕事一途な方だってきいていましたけれど
 私は自分の心で感じたことしか信じませんわ」

「人の噂も少しは信じておいた方がいいですよ」

この速水真澄の無頼を気取るのもそろそろ飽きた。
そしてこの後は紫織さんの生い立ちと自分語りと速水真澄との出会いによる変化。

  • わたくしあなたに感謝していますのよ
  • 子供の頃は病弱だったせいで内気で外へ出るのも嫌で
  • 温室の花が唯一のお友達でしたの
  • 大人になってからもその性格は変わらず閉じこもってばかりいましたわ
  • 父も母もそれから特に祖父が心配していましたの
  • でもあなたと出会ってから本当に明るくなりましたもの
  • 笑顔がおおくなったって祖父がとても喜んでくれるんです。

「僕のせいではありませんよ
 あなたはご自分を知らなかっただけですよ」

適当にごまかす

「そう・・・そして俺も自分を知らなかった
 あの少女に出会うまでは・・・
 だがもう遅い・・・」

温室の花だけが友達だった女性と
プラネタリウムで一人泣いていた男の
悲しい物語が始まってしまった。

 

ちゅうわけで今回。
行方不明だった月影先生の行方が分かったにも関わらず
その情報があまり入ってこないくらい濃い。

まず初登場の鷹宮紫織様
日本有数の財閥ともいうべき企業グループ総帥の孫娘。
貧血で日常的にフラフラし、
子供の頃は温室の花だけが友達。
かなりキテいる人生である。
病弱で内気だったとのことだが
そのせいか洞察力は優れているようで
速水真澄とマヤの関係が普通ではないことを見抜いている。

そして相変わらずやばいよ速水真澄。
大都芸能のセキュリティは相変わらずだが
社長が会社に彼女を連れてきて、それを社員たちが噂する。

社長の立場、彼女の立場、社員の立場、
それぞれに立って見て想像したがどれも嫌だ。
このあたりが昭和の会社なのか。
昭和の会社知らんけど

ほんで月影先生の消息は数人にしか話していないとのこと。
しかし月影先生は自身の居場所を知られたらまた行方をくらますと行っているとのこと。
なぜその情報を、口が軽く姫川邸にて話してしまう小野寺先生に伝えてしまうのか。
もはやスパイ探しの罠のようでもある。

そして「プラネタリウム卒業宣言」
これは速水真澄の気持ちならびに人生へのけじめだと解釈している。

子供の頃より本心を隠して生きるよう育てられた彼にとって
思い出のプラネタリウムは、唯一本心を人知れずさらけ出せる場所であった。
いじめられた時、母を亡くした時はプラネタリウムの星の下で涙を流し、
そして日常へと戻って行った。

速水真澄もまた仮面を被っている。
大都芸能の仕事の鬼、という修羅の道の仮面をかぶることで
熱く優しく情熱的な自身の本心を隠している。
そしてその仮面の下の素顔を知っているのは水城さんだけであり
なんとなく気づいてるマヤに対してだけは本心を全開ではないが開くことができる。
そしてマヤに恋心を抱くも、年齢差そして過去の経緯からその目はないと判断、
そして父の進める縁談を受け、本心を隠し、修羅の道を進む決意をした。
そのけじめがマヤといった最後のプラネタリウムだったのだろう。
だからこれから行くこともないといったのだろう。

ここまでは悪くないのだが速水真澄、
けじめつけたにも関わらず、うじうじとまたマヤを気にしてしまう。

それが最後の「だがもう遅い・・・」という言葉に現れている。

女の子にフラれて「もう連絡しないぞ」と決意したにも関わらず
電話番号を消去できず、ずるずると連絡してしまう情けない男みたいなものである。
でもそんな人生も悪くない。身に覚えある。

つづく。

 - あらすじ・ネタバレ注意, 第30巻・紫の影(3)