【ネタバレ注意】ガラスの仮面第30巻その④【もっと昔に共演したかったね】

   

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後日。

「忘れられた荒野のメンバーです。
 前の稽古場に残したままにしてある荷物をとりにきたんですが」

荷物を取りに来たマヤたち。
大沢事務所でももはや邪魔者的な扱いを受けている。
ロッカーで荷物を整理していると稽古場の方から歓声にも似た野次馬の声。
声につられて稽古場を覗いたマヤも声をあげる。

「迫力・・・本当にすごいんだな円城寺さんて
 手も足も長くてスタイルもいい・・・」

「イサドラ!」の稽古でダンスを披露する円城寺まどかさん。
これまでは某歌劇団出身のめんどくさい大女優という印象でしかなかったが
稽古だけで圧倒的な存在感を見せつける実力はお持ちのようである。

「波乱万丈の人生を生きた天才舞踊手イサドラ・・・か
 どんなお芝居なんだろう、みてみたい・・・
 イサドラのためにこの稽古場を出ることになったのに
 こうやって稽古を見ているとそんなことどうでもよくなってしまう・・・
 あたしやっぱりお芝居が好き・・・」

個人的な経緯などはさておき純粋に芝居の中身や稽古が気になるマヤである。
そして稽古場には名だたるスタッフも参集。

  • 有名な舞台美術家の古原猛だ!
  • あっちは国際的な舞踊家で振付師の立花ミレイよ!
  • ブロードウェイでヒット作を多く手掛けている照明家のラッセル氏もいるぜ!

錚々たるメンバーの「イサドラ!」に対し、
「忘れられた荒野」はスタッフ未定
定員450の錦友ホール。

そしてなんと「イサドラ!」は大都劇場で上演されるらしい。

同じ事務所にも関わらず、極端な差に不信感を募らすメンバーであった。

そしてさらに激震。

「おい!たいへんだ!
 俺たちが上演するはずだた錦友ホールがとりやめになったぞ!」
「なんだって?そんなバカな?」
「いったいどういうわけなの?」
「黒沼先生はなんといっているんだ・・・・?」

するとビールの缶で壁を叩く音。
一同が振り返ると昼日中から酩酊の黒沼先生。
この人は酒弱いのか酒量が多いのか。

「先生!本当ですか?
 錦友ホールが中止になったというのは?」

「ああ・・・錦友ホールは金がかかるということでな
 もっと低予算でやれる劇場を社長が探してくれるそうだ」

イサドラへの予算確保のために先に予定していた劇場をとりやめにするという暴挙。
中には社長へ直談判を試みようとするものも。

「よせ無駄だ!
 俺が何度も社長と掛け合った結果がこれだ!」

「ひどいわこんなことって・・・!
 事務所はイサドラばかり力を入れて!
 私たちの芝居は潰す気なの?忘れられた荒野はどうなるの?」

誰か知らんが名もなき女性共演者の悲痛な涙の叫び。

「劇場と上演日は未定・・・
 だが俺はきっと演ってやる・・・
 演ってやるぞ・・・」

ビール缶を握りつぶす黒沼先生

「上演日も劇場も未定だ
 無理は言わん。辞めたい奴はやめていいぞ。
 それでも俺について芝居をやりたいという奴は残ってくれ・・・!」

「黒沼先生・・・」

 

そして後日。線路横に面したパチ屋二階の稽古場。

「この稽古場もずいぶん寂しくなっちゃったわね。」

「そうだねマヤちゃん」

閑散とした稽古場。
マヤと桜小路君、そして窓際で台本を読んでいる男性。

「役者の大半が辞めてしまうなんて・・・
 残ったのは僕たち二人とスタッフが3人・・・」

あの悲痛な叫びの名もなき女性も辞めたんかい!
世の中はドライだ。
そして窓際で台本を読んでいるのはスタッフか!
彼はもっと評価されて良い。

「あたしはやめないわ、どんなことがあっても」

「助かった!僕の相手役がやめないでくれて
 これで僕もとにかく稽古はできるわけだ。
 どんなんことになっても二人で稽古を続けようね」

「うん」

 

さてその頃黒沼先生

「俺の芝居・・・俺の役者・・・」

舞台好きのジャイアンか。

「イメージに合わんだと?
 せっかく事務所で紹介してやった役者たちを
 オーディションもせんで断るとは贅沢な!
 自分で勝手に探したまえ!」

怒りの社長の回想。
どうやら役者が辞めさらに事務所が当てがった役者を断ったらしい

「男爵・・・スチュワートの恋人・・・
 メイド頭でジェーンの教育係・・・
 どこかにいるはずだ俺のイメージ通りの人物が・・・
 忘れられた荒野の芝居にふさわしい俺の役者が・・・
 きっとどこかにいるはずだ・・・!」

駅前の広場っぽいところにビール片手に座り込む黒沼先生。
ちなみに真昼間である。

 

かと思いきや桜小路君は大沢社長に呼ばれていた。

「僕をお呼びとか、ご用はなんでしょう?社長」

「話というのは他でもないがね。
 これを読んで見てくれんかね?
 若手人気NO1の桜小路君の力をぜひ借りたいのだ」

社長の前には「イサドラ!」の台本

「どうかね?イサドラ!に
 円城寺まどかの恋人役で出演してみないかね?桜小路君!」

「僕にイサドラの恋人役を?」

「君にぴったりの役だと思うだがどうかね?
 それにこれは円城寺まどかさんのたっての希望なんだ。
 どうしても君をイェセーニン役にと言ってな。」

「円城寺さんが?
 でも僕には忘れられた荒野があります。
 スチュワート役に愛着もありますし」

「そこだよそれ!台本を読んでじっくり考えて見てくれたまえ。
 それに円城寺まどかが相手役なんてこんな幸運な男はめったにいないよ。
 このイサドラは話題になる。
 この秋一番の評判にしてみせる!どうかね桜小路君?」

「せっかくですが僕は今のこの芝居が気に入っていますし
 いいスチュワート役をやりたいと思っています。
 今の僕は他の芝居に出る気はありません」

台本も受け取らずに去って行った桜小路君、男気残留。

そして別室からは円城寺さん

「引き抜き作A、まずは失敗というところね。
 でもあきらめないわよわたくし」

怖いんですけど。

 

「忘れられた荒野」出演者一般募集!

街にはチラシが貼られていた。
演劇専門誌にも募集の広告が。

「出演者はチラシで募集してるんですって!?
 素人芝居でもやるつもりかしら?」

円城寺さん大爆笑。

「黒沼君に命令されてやっただと?
 あんなチラシを街中に貼るなんて大沢事務所の恥だとは思わんのか!」

こちらは激怒の大沢社長。

「街中に貼ってあるようなチラシを見てまともな役者がやってくるか!
 大沢は役者も集められんといい笑い者だ!」

 

稽古場ではカップラーメンをすする黒沼先生と出演者二人。

「イメージだ。俺は自分のイメージを大事にしたいんだ。
 素人も含めて一人でも多くの人の中からイメージにあった役者を選びたい・・・
 たとえ素人でもやる気さえあれば俺はきっとうまく舞台の上で動かしてみせる・・・
 俺は芝居が好きなんだ。だから大切にしたい・・・」

「黒沼先生・・・
 はい・・・!あたしも芝居好きです。
 どんなことがあっても黒沼先生についていきますから!」

「よし!気に入ったカップラーメンもう一個食っていいぞ!」

「好きなんだ・・・黒沼先生本当にお芝居が好きなんだ。
 とても大切に思ってるんだ。何よりも・・・」

乗ってきた黒沼先生。

「では二人に稽古をつけてやろう!
 おい他の役を手伝ってやれ!」

残ったスタッフは欠員の役者の代わりを演じる。
黒沼先生の鬼才に憧れているのだろうか。

スチュワートがジェーンを外に連れ出し街を見せるシーンの稽古。
暴れるジェーンを車を用意し街へ連れて行く。

「よし次の場だ。ジェーンを街から連れて帰ってきた後の変化だ」

「待ってください先生。
 台本にはないけど
 ジェーンを街へ連れ出したところの演技をやって見たいんです。」

さすが桜小路君。
台本には直接的には描かれていないが
その裏にあるジェーンとスチュワートのストーリーを演じることで
ジェーンの心の変化を掴み促そうというわけだ。

「よしいいだろう。」

椅子を並べ車のシートに見立てる。
怯えるジェーンの肩を支えながら車に揺られるスチュワート。

「これが街だよジェーン。
 これが君の生きる世界なんだよ。
 さあ見るんだジェーン!
 君のいた荒野はどこにもないんだ!」

抜け殻のようになるジェーン

「よしできたなジェーン。その表情だ。
 よかったぞ今の出来を忘れるな。
 二人ともいい呼吸だ。」

鬼も大絶賛。

「できた・・・ジェーンの心になれた」

桜小路君のアシストで、さらにジェーンの境地に近づいたマヤ。

「さっきはありがとう桜小路君。
 おかげで演技がうまくできたわ。」

「お互い様だよ。
 君のジェーンがいいから僕のスチュワートも引き立って見える。
 ほんとだよ君がジェーンでよかった。」

「あの・・・あたしうまくいえないけれど・・・
 スチュワートが桜小路君でよかったと思ってるの。
 なんだかすごく自然に演技できるの。
 こんなのってはじめて・・・ありがとう桜小路君。」

極度の白眼になる桜小路君の心中やいかに。
ちなみに「こんなのってはじめて」のあたりがダウトである。

「もっと昔に共演したかったね。
 そうすればきっと・・・」

「えっ?なんなの・・・?
 何を言おうとしたの桜小路君・・・?」

そしてお芝居が好きなジャイアンは相変わらず街を徘徊していた。
劇場や劇団、演劇研究所を回る。

「俺の芝居・・・俺の役者・・・」

相変わらず所有権を主張する。

「見つけて見せる・・・必ず・・・」 

 

 
ちゅうわけで今回。
それぞれの芝居や今回の公演への思いが発露した。

「イサドラ!」に注力するため
もはや潰しにかかる大沢社長。

「忘れられた荒野」は眼中になく
ただ桜小路君の引き抜きを図る円城寺まどか

自身のイメージを大切にし、
「俺の芝居・・・俺の役者・・・」と
芝居をこよなく愛する黒沼先生。

そして敵対する円城寺まどかであろうが
単純に芝居が好きなマヤ。

桜小路君、最後の一言なんやねん。
もっと早めに共演できていれば???

マヤが役者として芝居としての思いを桜小路君に伝えたのに
桜小路君はその先にある役者としてではなく男女としての何かを見据えている。
だとすると円城寺まどかの引き抜きを断ったのは
男気残留とも言い切れない疑惑が払拭できない。

つづく。

 - あらすじ・ネタバレ注意, 第30巻・紫の影(3)