【ネタバレ注意】ガラスの仮面第30巻その⑦【あたしはジェーン・・・】

      2021/04/10

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その夜、黒沼先生のいない稽古場はカオスである。

酒を飲むもの、賭博を始めるもの。
野球中継を聞いているもの、井戸端会議に花を咲かすもの

「みなさん、黒沼先生がいなくても稽古をしてください!」

「かたいことをいうなよ。先生がいなきゃ俺たち何やっていいかわからないもんな!」

スタッフの呼びかけにも反抗。
8人の素人を配役したと聞いていたが
描写を見る限り20人近い人がいる。
アンサンブル的な役の人も含まれているのだろうか。

「なあにこの稽古場は。」

高笑いとともに現れたのは円城寺まどかさん。

「まるで浮浪者の溜まり場ね。
 黒沼先生がすごいタンカきってらしたからどんな稽古かと思って来てみれば・・・
 小学生でも学芸会の稽古はもっとちゃんとやるわよ。」

そして酔っ払いに絡まれる円城寺さん。
カオスである。

「やめろー!」

割れた酒瓶とともに現れたのは黒沼先生。

「お前ら何やってんだ稽古もしないで。
 芝居がやりたくてここへやって来たんじゃねえのか?」

もれなく酩酊中である。
さっきまで大沢事務所で土下座していたはず。
円城寺さんと稽古場に来る道中で酒を入手し酔っ払ったということか。
相当量飲んだのかそれとも意外と酒に弱いのか。

「みんな覚悟をしろよな。これから稽古をやるぜ。
 いいかお前らな。芸術祭で賞を獲るんだ・・・いいな
 いい演技してくれよな。」

突然の宣言に驚く一同。

「全員位置につけ!
 これより一幕から通し稽古をする!」

通し稽古どころか、まともに稽古すらしてない出演者も驚く。

「黒沼先生、今日はやめたほうが・・・」

「うるさい!酔っていても頭は確かだ!」

止めに入ったスタッフを殴る黒沼先生、頭は確かとは言い難い。

「黒沼先生・・・!
 いったいどうしたの?何があったの・・・?」

心配するマヤをよそに次々と指示を出す黒沼先生。

「いいか、ここが舞台だ。そちらは観客席
 これからやることをよく見ておけ。
 俺は酒を飲んでいるが頭の方までは酔っちゃいない。
 安心してついてこい。」

典型的な酔っ払いの発言。
台本はなし、アシスタントがプロンプをする。
出演者に位置や動きを指示。

「おいジェーン、闇の中の遠吠え行くぞ。
 用意はいいな。」

「ジェーンを演れるんだわ・・・
 通し稽古でやっとジェーンを・・・」

戸惑いながらもスタンバイするマヤ。

「あの子がアカデミー芸術祭で助演女優賞を獲得したですって?
 姫川亜弓も一目置いているという少女・・・
 どんな演技をするかじっくり見せてもらうわ。」

まだ余裕で上から目線の円城寺さん。

「通し稽古だって?
 どんな演技をしていいのかわからない素人が8人もいるというのに・・・
 黒沼先生は一体何を考えているんだ・・?」

珍しくマヤちゃん以外の単語を発する桜小路くん。

「円城寺さん、あんたもその目よく開けて、俺のやる稽古見てな。」

「ええ存分に見物させていただきますわ。
 こんな通し稽古は滅多に見られませんもの。
 社長のおっしゃる条件にかなう芝居になるかどうか
 じっくりと見させていただきますわ。黒沼先生。」

社長の提示する条件は不明のまま、
稽古場の照明が消される。

「いいか円城寺さん。
 最後までそこを動くんじゃないぜ。」

黒沼先生の両手が合図を告げる。
稽古場の裏の線路を電車が通過し、そして束の間の静寂。

「ジェーン・・・狼少女ジェーンを通して演れるのね
 ジェーン・・・あたしはジェーン・・・」

そして暗闇にひざまづくと雄たけびを上げるジェーン。

「この声は・・・なんて声・・・!」

早速度肝を抜かれる円城寺さん。

ジェーンの雄たけびは階下のパチンコ屋にもこだまする。
二階に円城寺まどかがいるという噂を聞きつけた野次馬も
稽古場に見物に来るというカオス。

そして照明が点く。

「この場の舞台は本来は真っ暗だ。
 まずはじめにビクトール男爵にスポットが当たる。」

黒沼先生の合図で芝居を始めるビクトール男爵役の竹本さん。
数少ないプロだけあって、安定の芝居で稽古をリードして行く。
相手は桜小路くん演じるスチュワートだ。

そしてスチュワートのナレーションと共に場転すると
逃げ回るジェーンと追いかける村人

ジェーンの機敏な動きに振り回され
そして狼少女が振り返ると咄嗟に逃げる。
段取り一切なしの素人ながら
ジェーンの芝居をしっかり受けている。
その動きに稽古場は大爆笑。

「なにあれ」

円城寺さんもおもわず笑ってしまう。
プロの芝居ではない計算のない動きだけに
不恰好ではあるが真実である。

「村人たちもっと前へ回り込め!
 そうだ!ジェーン!いいぞ!もっととびはねろ!」

笑顔で大興奮の黒沼先生。

「おどろいたわ・・・なんて身のこなしなの、この子」

歌劇団で鍛え抜かれたダンスの実力を持つ円城寺さんを唸らせる。

そしてようやく捕まったジェーン。
見世物小屋の男に首輪で繋がれる。
男役は暴走族。
とてつもない棒立ちだが、声は大きい
拙い演技で赤面しながらも、全力の芝居で稽古場を沸かせる。

「不思議だわ・・・
 演技なんてめちゃめちゃなのにこの芝居・・・
 なんだか目が離せない・・・
 惹きつけられる・・・」

 

ちゅうわけで今回。
黒沼先生と酒の関係性について。

黒沼先生は酒を飲んでいる描写が多い。
真昼間からビールを飲みながら役者を街中で探し、
大沢社長に連れられたパーティーでも交流などせず
ひたすら酒を飲んでいた。

都度顔が赤くなるまで飲んでいる。
酒量が多いのか。酒が弱いのか。

何より今回不思議なのは、さっきまで大沢事務所で土下座して条件を突きつけられたその後に
酩酊するほど酒を飲んで稽古場に現れた。

少々の時間があるとはいえ、移動中に酒を買って飲んだのだろうか。
大沢社長から突きつけられた条件は、酒に飲まれなければやりきれない内容だったのか。
それともただの酒好きのおっさんなのか
詳細は不明である

つづく。

 - あらすじ・ネタバレ注意, 第30巻・紫の影(3)