【ネタバレ注意】ガラスの仮面第30巻その⑧【これでいいんですの・・・?】

      2021/04/18

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「どうかなさいましたの?」

「え?」

「ぼんやりなさって・・・」

「ああ・・・失礼、ちょっと仕事で気になることがあったもので・・・」

ぼんやりしていたのは、デート中の速水真澄。
お相手はもちろん鷹宮紫織様だ。
レストランのようでもあるが、あちこちで踊っている人もいる。
ダンスホール(死語)だろうか?

「あなたを退屈させてしまいましたか?」

「いいえとても楽しいわ。
 こういう所って初めてですの。
 おかしいでしょこの年齢で。バカになさる?」

「いいえ」

「私と一緒にいて退屈ではありません?」

「いいえ」

自動音声のような返事がすでに退屈そうな速水真澄。

「よかった。さきほどはあなたが私に退屈してらっしゃるのかと思ってましたの。」

「あなたに余計な気を遣わせましたね。
 そんなことはありませんよ」

「私自信がありませんの、自分に・・・
 子供の頃から病弱でお友達もあまりいませんでしたし
 こうやって男の方とお付き合いすることもあまり・・・
 ですから本当は何を話していいか戸惑っているんです。」

病弱からの友達いないエピソードの再来。
そして男と付き合うのはあまり、ということはゼロではないということか。
自分に自信がない紫織様、精一杯の背伸びが感じられる。

「それにしては楽しそうだ。」

「相手があなただからですわ。
 こんなに自然にお付き合いできるなんて自分が信じられませんもの。
 きっと女性の扱い方がお上手なのね」

「僕がうまいのは役者とタレントの扱いだけですよ。
 子供の頃から仕事にばかり興味を奪われていましたからね。
 女優でもないあなたを前にして戸惑っているのは僕の方です。」

得体の知れないワーカホリックエピソードと
それを聞いて赤面する紫織様。この方も変態か。

「少し・・・踊りませんか?」

「踊れませんの。学生時代体育はいつも見学でしたのよ」

「大丈夫ですよ激しい運動ではないし
 僕についてくればいいですよ。さあ。」

紫織様の手を取りエスコートする速水真澄。
日常生活すら危うい健康状態やのに、
心ときめかしたままダンスは、紫織様にとっては激しい運動の部類である。

ホールでは早速評判に。
大都芸能の仕事の鬼が女性を連れている。

「みんなが見ていますわ・・・」

「あなたが素敵だからですよ。
 かたくならないで、そう僕に任せて」

「足がもつれそう・・・
 転んでしまったらどうしましょう」

「あなたを抱きかかえていますよ」

速水真澄の相手が鷹通グループ総帥・鷹宮天皇の孫娘ということが知れ渡り
ホールの中はさらに騒然となる。

「真澄さま・・・周りの方達が・・・」

「音楽だけを聴いていなさい」

「でもみんなが見ていますわ」

「では僕だけをみていなさい」

見事なまでの立ち居振る舞いにうっとりとなる紫織様。
その様子を見つめる周囲。そしてホールの片隅にはあの方が。
我らが敏腕秘書、水城冴子さんである。

「真澄様・・・
 これでいいんですの・・・?あなたはこれで・・・
 自分の心を騙すおつもりなの?
 それでいいんですの真澄様・・・!」

なぜか壁にもたれて悶絶している。

「これは秘書の水城様」

そんな水城さんに話しかけるホールの支配人。

「支配人、速水社長がお帰りになるときにこれを。」

「お仕事の書類ですね、かしこまりました。」

「わたしもヤボなまねはしたくないので。これで。」

散々速水真澄の心の奥を見透かしておきながら
ヤボなことはしないという謎ルール。

「真澄様、紫のバラはどうなさるおつもりですか?
 あなたは一生紫のバラの陰に隠れているおつもりですか?
 あの少女に希望と夢を抱かせたまま・・・
 あなたは会うことも話すこともできない紫の影・・・
 このまま永遠に影でいるおつもりですか?
 それがあの少女にとってどんなに残酷なことかおわかりではないのですか?真澄様・・・」

帰路の水城さん、2ページぶち抜きの長ゼリフ。

  • あの子はどんなに苦しい時でも紫のバラを心の支えに生きて来た
  • いつか紫のバラの人に会いたい・・・
  • それが頼れる家族もいないあの子の唯一の願いだということがおわかりにならないのか?
  • 紫のバラの人のことを話す時の仕草、表情、輝く瞳
  • お気付きではないのですか?真澄様
  • あの子がまだ見ぬ紫のバラの人に愛情さえ感じているということを・・・

水城秘書、ヤボな真似を通り越して
秘書の仕事の内容とは思えない長い独白。

結論、その肝心の真澄様は気づいていない。

 

その頃稽古場では「忘れられた荒野」の通し稽古が白熱していた。
スチュワートとビクトール男爵を中心に進行していく芝居。
そしてジェーンの姉が死んだ。
悲しみの鳴き声を上げるジェーン。

鬼才・黒沼龍三、酒を飲んでいてもこの芝居に鋭敏に反応。
台本に印をつけるようスタッフに指示を出す。

スチュワートの家に連れられてきたジェーン。
狼少女としての動きや芝居に感嘆する一同。

「なんなのこの子・・・芝居が進むにつれどんどん役にのめり込んでいる
 これは演技なの・・・本当に・・・?」

円城寺まどかさん、芝居が始まってから度肝を抜かれ続けている。

そして黒沼先生、手にしたライターを意識か無意識か落とす。
床に落ちて音を立てたライター。
刹那その方向に反応するジェーン。

「なんなの今の表情は・・・?
 一瞬だったけれどあれは・・・あれは演技じゃないわ。
 ライターの落ちる小さな物音に反射的に身体が動いた
 狼少女ジェーンとして・・・なんて子・・・
 姫川亜弓を抑えて助演女優賞受賞、紅天女候補
 こんな子だったの・・?
 私が相手にしようとしているのは・・・こんな子だったの・・・?」

もはや後悔に近い感想の円城寺まどかさん。
そしてニヤリと微笑む鬼才

 

「真澄様・・・
 またなにかお考えでしたの?仕事のことでも?」

「いいえなにも。なぜそのようなことを?」

「いえ・・・気のせいですわ、わたくしの・・・」

速水真澄の優しさに触れるもなぜか不安な紫織様。

「気のせい・・・ですわね真澄様
 時折あなたが遠い目をなさるのは
 わたくしの気のせいですわよね
 真澄様・・・・」

不安な心を抱えたまま踊る紫織様。
そして遠い目の速水真澄。
自身の心だけでなく、他人をも騙しかけている。

 

 

ちゅうわけで今回。
水城秘書が熱い。
とんでもない長ゼリフだが、要約&補足すると

速水真澄はマヤのことを愛している。
そしてマヤは紫のバラの人を心の支えとし、感謝し、
そして愛情すら覚えている。
しかしマヤにとって速水真澄は母親の仇であり、
これまでの経緯からも不倶戴天とも言える間柄。
紫のバラの人であることを名乗ることはとてもリスクのあることである。
そして紫織様と結婚することで、自身の心を騙し、
永遠に名乗り出ることなく影のまま生き、
そしてマヤは紫の人に永遠に会えない。
お互いそれでええんかい!?

という内容である。
しかもこれを壁にもたれて悶絶したり、泣きそうな顔をしながら語る水城さん。
とても熱い心の持ち主である。
速水真澄とマヤ双方をよく知っているというのもあるが
ここまで必死に考えることができるのはすごい。
これも速水真澄への忠誠心ということであろうか。
ただ、秘書の職分を逸脱していることに変わりはない。

つづく。

 - あらすじ・ネタバレ注意, 第30巻・紫の影(3)