【ネタバレ注意】ガラスの仮面第31巻その②【おれは今まで人を愛したことがない】

      2021/05/08

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ある朝、雨月会館。
稽古に集まった一同の前には驚きの光景が。

「なに?どうしたの?
 これはいったい・・・?」

「いや今朝きたら工事中になってんだ。
 どうなってんだ?」

おんぼろ雨月会館の修理が行われていた。

「工事の責任者です。
 ある人物から依頼がありまして修理させていただいています。
 この劇場のオーナーと話はついているし費用も先払いだということで・・・
 三日ほどかかりますが修理が終わったら新館同様になりますよ。」

「ある人物から依頼・・・?」

そして三日後。
美しい外壁、輝く看板、
明るく反射するロビー、
場内も美しく輝き、座席まで入れ替えられている。
そして舞台も修理されていた。

「どうなっているんだ?これはいったい・・・」

さすがの黒沼先生も驚いている。
そして舞台には

「紫のバラ・・・
 紫のバラの人だわ・・・!
 あの人だわ!あの人がしてくれたんだわ!
 劇場の修理をなにもかも・・・・
 あたしのために・・・私のやる芝居のために・・・」

涙を流しいつもと同じ感謝の言葉を述べる。

 

「全日本演劇協会賞だと?真澄」

その頃速水邸にて
義父と話をしている推定数千万を雨月会館につぎ込んだ男。

「驚いたな、その少女は本気でそれにかける気なのか?
 参加作品でもない芝居で・・・
 もしそれで賞を獲れば芸術大賞以上の価値を人に認めたことになるな。
 それで見込みはあるのか?」

「ええ1%の可能性が・・・」

「面白い!さすが月影千草の見込んだ少女だわい!
 紅天女候補だけのことはある。
 姫川亜弓とはまったく違うタイプの違うその少女が
 どんな才能を秘めているのか見て見たいものだな。」

どうやら義父もマヤに興味津々のよう。

 

雨月会館は相変わらずざわついている。

「俺たち本当にこんなところで演るのか・・・?」

急遽美しい劇場と化した雨月会館に驚く出演者たち。
黒沼先生も紅潮している。

「ありがとう紫のバラの人・・・
 あたしあなたの心のこもったこの劇場で
 狼少女ジェーンを演ります・・・」

思えば劇団つきかげの最初の舞台「若草物語」の初日に紫のバラを贈ってもらったのが始まりで
それからは舞台のたびにいつも紫のバラを贈ってはげましてくれた。
名前も正体も明かさないまま、身寄りのないマヤを高校まで進学させてくれ、
「奇跡の人」ではヘレンの役作りのために別荘を貸してくれた。
その時には危うく正体がばれかけたが。
その後も苦境に陥るたびに手を差し伸べてくれた紫のバラの人。
名前も姿もわからず、架け橋は聖さんだけ。

「たったひとりのあたしのファン
 この人のためにも舞台に立ちたいって!
 紫のバラの人・・・いつかあなたにあいたい・・・!」

とまあ、紫のバラにまつわるエピソードを振り返りながらの
マヤの感謝のボイスレターであった。

海辺の別荘でそれを聞いている速水真澄。

「テープを止めてくれ。聖。」

「雨月会館の改装のお礼にぜひあなたに言いたいとマヤ様が吹き込まれたのです。
 まるで目の前にあなたがいらっしゃるかのように嬉しそうに話しておいででした。
 このままでは残酷です。」

「おれは名乗り出る気は無い。
 おれはあの子の母親を死なせた男だぞ。
 あの子はおれを殺したいほど憎んでいるんだ。
 正体を知ってどうなる?あの子を苦しませるだけだ。」

「・・・・・・・・
 ほんとうは正体を明かすのが怖いのではありませんか?真澄様」

答えない速水真澄。
しかし彼の右肩から左脇下にかけて
!マークが巨大に描写されていた。

「正体を知ったあの子がどう思うか?
 紫のバラの人を拒絶したら・・・
 それをあなたはおそれているのではありませんか?
 もしそうなったら紫のバラの人としてもう手を差し伸べることもできない。
 今までのように紫のバラを通してあの子とつながっていることもできなくなる・・・」

聖さん、敏腕秘書の魂が乗り移ったかのように
今まで漠然としていた速水真澄の本心をズバズバと言い当てるグッジョブ。

「聖・・・そうだ!」

否定しない。

「おれは今まで人を愛したことがない・・・
 子供の頃から仕事の成功だけが価値のあるものだと思って育った。
 人の愛し方も愛され方も教えられなかった・・・」

環境のせいにするな

「それが・・・なんてことだ。
 はじめて人の心が気になった。
 人の心を恐れることを知った。」

その割には水城さんや聖さんに本心を言い当てられて
しょっちゅうびっくりしているようだが。

「仕事ではやり手と恐れられたこのおれが
 あんな少女相手にどうすることもできずに戸惑っている・・・
 あの少女の口から拒絶の言葉が出るのをおそれて身動きもできないとは・・・
 11だぞ・・・11も歳下の少女に・・・なんてザマだ・・・」

もはや年齢差は関係ない。

「人を愛すれば誰でも不器用になります。」

「不器用になった経験があるのか?」

「はい・・・真澄様。
 予定ではいつお戻りですか?」

「明後日の月曜の朝の会議までには戻る。」

気になる聖さんの恋話は体良くごまかして仕事の話。

「マヤ様が全日本演劇協会賞を・・・ですか?
 芸術祭参加を認められていない作品の役者が賞をとるのは難しいことでしょうね。
 芸術祭の審査員や関係者が注目することはあまりありませんから・・・」

「注目させるにはきっかけが必要だ。
 チャンスはある・・・一度だけな・・・
 だがおれはもっとあの少女に憎まれることになるだろう」

「真澄様・・・あなたの中の海は広すぎて僕には見えません・・・
 昔も・・・今も・・・」

謎の独り言を残して去っていく聖さん。
あんた速水真澄の本心をあれだけ克明かつスリリングに語ってたやん。

「引き潮・・・か
 今のおれは浅瀬の小舟だな。
 砂浜に取り残されて岸へも戻れず沖へも行けない
 全てがもう遅い・・・」

脳裏には紫織様が浮かぶ
なんか上手いこと言ってみた風の発言だが要は優柔不断臆病である。

 

ちゅうわけで今回。
今までなんとなくはわかっていたが正確ではなかった速水真澄の本心を
聖さんが代弁しそれを速水真澄が肯定するというお話でした。

そして過去最高額、推定数千万円は下らない投資。
これまでは

紫のバラ 花束〜花輪まで  数千円から数十万円
ドレスや靴、鞄など   数十万円
舞台のメイク道具セット 数万から十数万
一ツ星学園高校の学費  数百万円

などがつぎ込まれていたが
劇場のリニューアルなど常軌を逸している。
マヤも感動し感謝はしているが、その規模と金額の異常性に気づいていない。
もしくは貢がれ続けて感覚が麻痺しているのだろうか。

つづく。

 - あらすじ・ネタバレ注意, 第31巻・紫の影(4)