【ネタバレ注意】ガラスの仮面第32巻その③【生きた舞台?】

      2021/08/22

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「古タイヤにブロックをおろせ!
 場内へ運びこめ!」

突如としてやる気を出した黒沼先生の指示のもと
ガラクタを雨月会館に運び込む出演者やスタッフ。

「よしごくろうだった!
 これからみんなに舞台のセットを組み立ててもらう」

「舞台のセット?これで?」

どこからか手に入れてきた古タイヤやコンクリートブロック
汚れているものは水で洗い、形を整えペンキを塗る。

出来上がった舞台。
上手にブロックがピラミッド状に積まれ
下手にはタイヤの山。
上からはいくつものタイヤがぶら下がっている。

「これが忘れられた荒野の舞台・・・?」

「そうだ。そしてこれはまだ舞台として完成品ではない。
 未完の完成なのだ。
 演技が変われば舞台も変わる。
 そのまた逆もある。
 それをよく覚えていろ!」

「演技が変われば舞台も変わる・・・?
 そのまた逆も・・・?
 どういうこと・・・?」

「男爵!、若き人類学者スチュワートくんのところからやってくれたまえ」

「はい」

いきなり指名を受けたのはビクトール男爵役の竹本さん。
もともとビクトール男爵役は影山さんという
テレビなどにも出演しているベテラン役者だったが
度重なる黒沼先生のパワハラ指導により辱めを受け脱退、
その後釜に座っている。
初心者だらけの座組みにあって数少ないプロの役者。
安定の芝居で長ゼリフを朗じる。

「今のセリフ、次は遠慮がちに言って見てくれたまえ。」

黒沼先生のリクエストに応じて芝居を変える竹本さん
遠慮がちに、しかも顔を赤らめ小刻みに震えるというアクセント付き。

「次は眠そうに」

今度はあくびをしながらの芝居。

「怒りながら」

机を叩いて怒りながら同じセリフを言う。

「へえ、同じセリフでも演技をかえただけで
 随分芝居の受ける印象が違うな。」

感嘆する共演者達。
ちゅうか竹本さん、すごい。

「スチュワート次のセリフをやってみろ」

ここで指名された桜小路くん、ビクトール男爵のセリフに続く。

「つぎ、眠そうに!」

あくびをするスチュワートの芝居

「怒りながら!」

男爵に食ってかかるスチュワート。

「つぎ!遠慮がちな男爵と怒っているスチュワートでやってみろ」

小刻みに震える竹本さんと手を振り上げる桜小路くん

「怒っている男爵と眠そうなスチュワート」

次から次へと繰り出される難題をクリアする二人。

「おもしろい・・・演技が変わっただけで芝居が違って見える・・・」

感嘆するマヤ。
お前はこの前、円城寺さんと違う表現をして恥かかせたばかりやろ。

二人の巧みな芝居の化学反応で稽古場は爆笑に包まれる。

「ところでみんな。これはなんだ?なんの形に見える?」

突如ライターに火をつけて出演者に見せる黒沼先生。

「ライターです。」

「そうだこれは間違いなくライターだ。
 ではこの形はなんだ?
 これは?
 これはどうだ?」

ライターの向きや角度を変える。

「そうだ同じライターでもみる角度によって色々と形が変わる。
 俺はこの芝居もどれだけ違う形をみせられるか
 やって見たいと思っている・・・
 初日からしばらくは今まで通りの芝居をやる。
 この芝居が基本だ。俺は生きた舞台をやりたいんだ。」

「生きた舞台?」

「同じセリフでも演技が変わっただけでまったく違った芝居になってしまう。
 一本の脚本から何本もの芝居が生まれる可能性があるんだ。
 安心しろ。セリフも筋も変わるわけじゃないんだ。
 君たちにはその可能性に挑戦してもらいたい。」

わけはわからないが盛り上がる稽古場。

「さあみんなやってみろ。遊ぶつもりでいいぞ。
 パトリー夫人、陽気に!」

笑いながらセリフをいうパトリー夫人。
この方は病院の看護師長。
テキパキと部下に指示を出す姿を黒沼先生が見てスカウトしてきた。
もちろん芝居経験はなかった、にも関わらず
「陽気に」「怒って」「怖がって」という
黒沼先生の無理難題をこなす。
芝居始めてわずかなのにすごい。

そして新聞記者役の暴走族も同様に稽古を楽しむ。

「生きた芝居・・・黒沼先生はいったいどんな舞台を作ろうとしているの・・・?」

いや、これまで散々独自の解釈とぶっ飛んだ芝居で
数々の感動や爆笑をかっさらってきたマヤならわかるやろ。

 

その頃。波が打ち寄せる別荘地。

「そうか。黒沼龍三氏もやっと本気になったか。」

「はい。今までとは違う稽古を始めたようです。」

バルコニーで報告を受ける速水真澄。
報告者はもちろん聖唐人さんだ。

すると別荘前に停車した黒塗りの高級車。
車から降りたのは紫織様だ。

「どちらさまで?」

「真澄様の・・・知り合いですわ。
 こちらの別荘にいらっしゃるとうかがって。」

来客中とのことで部屋に通される紫織様。

「まあすごいご本だこと。」

本棚を勝手にみる紫織様
まあ世間知らずやししゃーない

「あら?奥の方に・・・何かしら?あ・・」

本棚の奥に隠すように立てかけられていた書物を取ろうとするも
滑って落としてしまう。

「!!」

床に落ちたそれはアルバム。マヤの写真が満載であった。

「真夏の夜の夢」「ジーナと5つの青い壺」「わが作品No707愛しのオランピア」などの写真

「これは・・・この間の少女の舞台のアルバム・・・!
 なぜ・・・?
 なんぜこんなものが本棚の奥に・・・?」

「なに!?紫織さんが?」

気配を察し慌ててアルバムをもとにあった場所に戻す。
窓の外では慌てるかのように走り去る車。

「いったい誰なのかしら・・・?
 私がきたことを知ってまるで逃げるように・・・」

これだけでそこまで察するあたり紫織さんも只者ではないが。

「これは・・・紫織さん・・・」

「真澄様。友達の別荘が近くにありますの。
 少し立ち寄るつもりできたのですけれど・・・
 おじゃまでしたかしら?」

友達おったんや。

「歓迎しますよ。女性のお客様はあなたがはじめてですから。」

この海の別荘に女性のお客は初めてだが
山の別荘には未成年女性を招き入れ、
そして散々に破壊しつくされた過去がある。

「ここは都会を離れてゆっくりと仕事の作戦を練るために来ているんです。
 今日はあなたが来てくださっていい気分転換ができそうだ。」

「まあ・・・!お優しいのね」

仕事の気分転換をする場所に少女のアルバムってどやねん。

「そう・・・真澄様・・・
 あなたはいつもわたしにはやさしい・・・
 不愉快な顔をしたことなど一度もない・・・優しすぎます・・・
 あの少女はいったいあなたのなんなのですか?真澄様・・・」

言葉にして直接聞くこともできず
心の中で問いをぶつけるかわいそうな紫織様であった。

 

ちゅうわけで今回。

「やっと本気になった」とまで言われている黒沼先生。
芝居を変えるその掛け算でいくつもの芝居を作り出すと言う演出力。
そしてそれをほぼ初心者にやらせる指導力。
とてつもないものがある。
そして黒沼先生自身も、初心者とはいえ逆に癖やしがらみや無駄なプライドのない
真っ白な役者を相手にとても楽しそうである。

そして速水別荘での出来事がいろいろとやばい。

まず婚約者ですともなのっていない、自称知り合いを
部屋に通してしまう別荘のおっさん。
この一連がバレたらクビである。

そして勝手に本棚を開けるのは世間知らずやからしゃーない、
アルバムが落ちたのも不可抗力、いわば紫織様は被害者としよう。

勝手に来客を通されるような部屋に、
大事なアルバムを、中学生男子が隠す雑誌のように隠している速水真澄。
やはりあなたはセキュリティ意識が甘い。

そしてスパイの聖さんを、誰彼くるようなところに呼んでいるのもやばい。
まあこの場合は一般の来客を装ってとも考えられるからまだよいが

深窓育ちの紫織様に見つかり怪しまれてしまう聖さん、
スパイとしての資質に疑問を感じる

以前もただの女子高生のマヤに、尾行され名乗る羽目になったのだが。

この速水主従の動きは、ツッコミどころが満載である。

つづく。

 - あらすじ・ネタバレ注意, 第32巻・紫の影(5)