【ネタバレ注意】ガラスの仮面第32巻その④【約束は守られる方です。】

      2021/09/02

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アカデミー芸術祭本部にて

「どうですか?演劇部門の方は?」
「やはり今の所イサドラがいいですね。
 審査員もこぞっていい点数を出している。
 観客数も申し分なし。
 全日本演劇協会員の評判もいいようです。」

現時点での評価を本部に取材する報道陣。

「だがなんといっても一番の注目は
 黒沼龍三氏の忘れられた荒野ですね。
 明日の初日には芸術祭の審査員を始め
 主催者である藤美食品の社長、全日本演劇協会の理事も出席とか・・・」

「参加が認められていない作品がこれだけ注目を集めると言うのは珍しい。
 芸術祭に特別参加ということはありえますか?」

「さあ、それは・・・」

もはや参加を認める圧力のような報道陣に
押されっぱなしの本部の人たち。

 

そして雨月会館

「いよいよ明日は初日だ!
 衣装や小道具に不備な点がないか、
各自くれぐれも注意してみておくように!」

初日を控え、初心者が多い出演者に
檄を飛ばし、注意事項を伝える黒沼先生。
初舞台を控えた初心者たちも
家族や友達がみにくるらしい。
暴走族上がりの彼は、バイク仲間がみにくるらしい。

マヤは家族はいないが、劇団の仲間は中日にみにくるとのこと。

「桜小路くーん!」

前日に登場したのは桜小路君の彼女の舞ちゃん。
巻き寿司のような手の込んだ差し入れを持参、
共演者たちにも振る舞う。

「ありがとう舞。おいしいよ。」

「ほんと!?
 うれしい・・・桜小路くんがそういってくれて・・・
 明日の初日にはもっとご馳走作って持って来てあげるわね。」

そんな舞ちゃん、マヤの姿を見つけると露骨に顔を背ける。

そして劇場には黒沼先生の奥さんから電話。
青い表情で電話に出ると、ひたすら謝っている様子。

奥さんがいたこと、そして案外恐妻家であることに驚く一同。

「家族・・・か
 いいな・・・母さん・・・」

「マヤちゃん、あなたに届け物」

入り口を見やると、紫のバラを抱えた聖さんが。

「こんにちは。花をお届けにあがりました。
 あなたが北島マヤさんですか?」

人前では知らないふりをする約束を思い出して慌てるマヤ。
ちなみい聖さんのいでたちは、どこからどうみても花屋の配達の人ではない。

「素敵な紫のバラ・・・どうもありがとう」

「お届け主から明日の初日、頑張ってくださいとのことです。
 狼少女の役を大変期待していると仰っていました。
 それからメッセージを一言、
 何かこまったことができたらいつでも
 この花屋に申しつけてくださいとのことです。」

家族はないが、ずっとマヤのことを思ってくれる
紫のバラのひとがいることを再確認し涙ぐむマヤ。

「あの・・・花屋さん
 この紫のバラの贈り主はいったいいつお見えになるんでしょうか?」

「明日の初日にお見えです。
 お忙しい方ですが、明日だけはなんとか時間をとられるようです。」

「紫のバラのひとが明日の初日にくる・・・」

「約束は守られる方です。」

「伝えてください。この花の贈り主に。
 顔はわからなくても劇場のどこかにこの方がいると思うだけでとても幸せです。
 一生懸命演りますって、紫のバラのひとに・・・」

「・・・承知しました。」

なぜか固まると、さっていく聖さん。
冷や汗をかいているようである。
マヤの喜びようと速水真澄の真実を両方知っているだけに
複雑な気持ちなのであろうか。

「聖さん、紫のバラの人とあたしを結ぶ架け橋・・・
 よろしく伝えてください。紫のバラの人に
 このバラを受け取るたびにどんなに励まされるかってことを・・・
 どんなに幸せな気持ちになるかってことを・・・」

みたこともないような豪華な紫のバラを見て驚く共演者たち。

「マヤちゃん・・・」

そしてなぜか白目になっている桜小路くん。
君はおとなしく差し入れ食っとけ。

「台風9号は北北東を進行中、今夜半にも九州海岸に上陸する模様です。
 なお台風9号は風速40mmかなりの雨量を伴い土砂崩れなどが心配されています。」

突如として、テレビから流れて来た気象情報
台風の進路は東京直撃らしい

「空は晴れてるぜ」

「当たり前だろ、くるとしたら明日だ。」

「明日・・・!台風・・・!」

 

そして翌日

AM8:00 快晴

AM1:00 曇り

AM3:00 空を黒い雲が多い雨が降り始める。

そして4:00には土砂降りの雨に。

家族や仲間に連絡をする共演者たち
天気予報では今夜8:00に関東方面を直撃するとのこと。

「今夜の芝居はどうなるんだ?上演できるんだろうか?」

「初日にアカデミー芸術祭審査員や、演劇協会の理事長もくることになっているのに」

「今夜8時というと芝居の真っ最中だわ」

動揺する一同を制する黒沼先生。

「俺たちが芝居を中止するわけにはいかん。
 今日のチケットを買った人たちがいるんだ
 たとえ一人でも客が来たら幕は開ける。」

ネットもスマホもない時代ですな。
今やったら逆に上演したら叩かれている。

そしてPM5:00には暴風雨。

「台風がだんだんひどくなってくるね、マヤちゃん。」

「ええ、桜小路くん・・・」

「初めての共演・・・か
 やっとこんな日がきたというのに・・
 昔二人でよくそんな話をしたね・・・
 君が相手役で二人で舞台に立てたらどんなにいいだろうって・・・
 やっと・・・この舞台で君と会えたのに・・・
 だから僕は・・・」

初日は危ういが、
上演が全て中止になったかのようなおかしなテンションの桜小路くん。

「大変な初日だね、もしかして一人の客も来ないかもしれないね。」

「桜小路くん、舞さんは?」

「無理だろう、この台風では」

「そう・・・」

といいながらマヤの頭は紫のバラの人でいっぱいだ。

 

しかしその頃。
観劇へと向かう人たちがいた。

「どうしてもお出かけになりますの?真澄さま。」

「ああ・・・!」

沈鬱な表情で接する敏腕秘書の水城さん
半ばあきれているようである。

そして姫川邸では

「亜弓お嬢様!台風が来てるんでございます!
 こんな日に外出なんて!」

「それがどうしたっていうの?
 こんな日に舞台を上演しようって人達がいるのよ。
 わたしは行くわ!車を出してちょうだい!」

なぜかお怒りの亜弓お嬢様。
この人、怒り出すタイミングがいささかおかしい。
そして「私は行くわ!車を出してちょうだい!」
と強烈な意志と他力本願。
やはり常人とはズレている。

そしてもう一人

「舞!台風ですよ!
 でかけるなんて無茶はおやめなさい!」

「いやよ!今日は桜小路くんの舞台の初日なのよ。
 舞、絶対行くの!」

暴風雨の中、手作りのケーキを持参して
常人は徒歩と交通機関で劇場へ向かう。

常人ではない、速水真澄と姫川亜弓はそれぞれの車で。

「亜弓お嬢様、申し訳ありません、先へ進めなくなりました。
 高速道路が封鎖されてしまいました。
 それに一般道路も一部通行止になったようで」

「なんですって!」

断腸の思いで断念。

そして一方の舞ちゃん。
暴風雨の中バス停を待つも、運休になってしまった模様。
そして暴風雨に飛ばされた木の枝が当たり、
手作りのケーキは道路に叩きつけられてしまう。
桜小路くんを思いながら嗚咽して断念。

そして速水真澄。

「ここから先は道路が通行止になりました。
 Uターンしてください。」

道路が封鎖された。

「どうしましょう?真澄さま
 ここを行く以外に雨月会館へは・・・」

無言で車を降り暴風雨にさらされる速水真澄。

「歩いて行く。」

心配する運転手さんを置いて、
暴風雨の中歩いて雨月会館へと向かうのであった。

 

ちゅうわけで今回。

姫川亜弓、怒っているのがなんとも理不尽である。
とんでもない台風の日に、舞台を決行しようという
演劇人の意気込みに触発されて
負けてなるものか、と思ったのであろうか。

しかし、その魂の叫びを
演劇人でもなんでもない自宅の使用人に熱く語ったところで何にもならない。
梅乃ばあや始め、この突然スイッチが入るお嬢様には辟易しているのであろうか。
しかも、そこまで熱くなるなら自力で行けばいいものを
車を出させると言う矛盾。

そもそもこの人、かなりズレているところがあって
親の七光りを嫌って、自宅を出るも、
父親の別宅に住み込んで、三日に一度はばあやを呼んだり、

あるいは頼まれてもいないのに、
マヤを陥れた乙部のりえを倒すため
あれほど嫌っていた七光りを用いて
乙部のりえの共演者に食い込み、
本番では散々に主役を食って
勝手にマヤの仇をとったり、

「ふたりの王女」では悲劇の王女オリゲルドの心を会得するために
不衛生不健康な生活をし、
果てには裏街の片隅でスケバンと喧嘩したり。

芸能界のサラブレッドにして類い稀なる美貌を持つ
その表面とは裏腹に熱い心をお持ちなのだが

ちょっとおかしい。

つづく

 - あらすじ・ネタバレ注意, 第32巻・紫の影(5)