【ネタバレ注意】ガラスの仮面第33巻その②【もう一つの忘れられた荒野・・・】

   

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翌日。
日本アカデミー協会、アカデミー芸術祭実行委員会が集合。

「それではよろしいですかな?みなさん
 ではこれより黒沼龍三氏演出『忘れられた荒野』の
 芸術祭参加可否の採決を撮りたいと思います!」

昨日の観劇を終えて翌日には参加可否の採決。
意外と実行委員会はフットワークが軽い組織なのか
それともこれほでの力作に参加を認めないことへの批判を恐れてであろうか。
そしてその結果は黒沼先生の元へ

「ええっ?忘れられた荒野の芸術祭参加が認められた?」

どよめく一同

「みんな!たった今我々の芸術祭参加が決まった。
 昨日の芝居で君たちの実力が認められたんだ!」

「認められた・・・芸術祭に参加が・・・
 紅天女への希望が繋がった・・・!」

「よかったな。北島。
 これも速水氏のおかげだ。感謝しろ!
 もしイサドラの初日のロビーで彼がお前に喧嘩をふっかけなければこうはならなかっただろう。
 あの時初日のロビーに藤美社長や全日本演劇協会の理事長、芸術祭の審査員のほとんどがいたんだ。
 昨日の芝居に来てくれた人たちだ。」

「そんな・・・!これは偶然です!
 速水さんはあのときあたしに恥をかかせようとあんなことを・・・」

「そんなあさはかなヤツじゃないよあの男は
 ま!偶然でもいい。俺は結果を言っているんだ。
 こうなった原因はあの男だってことだ。」

水城さんが言っていた
「真澄様は結果を考えないで動く方ではない」
という言葉を思い出すマヤ。

「じゃまさか速水さんはこうなることを予想してあんな・・・?
 いったいなぜ・・・?」

そしてその日の本番。
評判を聞きつけてマスコミが取材に。
NBSテレビも入り芸術祭参加作品として録画を行う。
客席はざわめく。観客の間でも関係者の間でも話題になっているとのこと。
そして従者に肩を支えられ、杖をついて歩く老人も来館。
開幕早々、ジェーンの雄叫びに度肝を抜かれる。

終演。感動と驚きを口々にしながら劇場を後にする観客たち。
そしてロビーにはマヤに会いたいという人が待っていた。
先ほどの老人である。

「はい北島マヤですが」

「どうなさった?ぼんやりした顔つきをして?」

「あたし芝居が終わった後っていつもこうなんです。
 なかなか自分に戻れなくて・・・
 今もジェーンがこの手にこの身体に
 気持ちの中に残るんです・・・」

「そうですか。わたしの知っていたある女優さんが
 ちょうどそんなふうでしたよ。」

優しく微笑む。

「あの・・・おじさんはどなたですか?」

「お忘れなのは無理もない。
 前にお嬢さん、あなたに駅でチラシをもらった男ですよ。」

「ああ・・・!あのときの・・・!
 缶ジュースのおじさん!来てくださったんですか!わざわざ!
 わあ!うれしい!ありがとうございます!いかがでした!」

喜びで男性の手を握り倒すマヤ。

「最高でしたよ。
 この役はもうあなた以外の誰にも演れませんよ。
 あなたが完璧な狼少女ジェーンを演ってしまったのだから。」

まさかの手放しの大絶賛に驚くマヤ。

「照れなくてもいいですよ。今にきっとそうなりますよ。」

そしてマヤを呼ぶ声が。ミーティングが始まるらしい。

「時間を取らせましたね。ではまたお会いしましょうきっと!マヤさん。」

「なんだろうあのおじさん
 いいのかなあたしのこと、あんなに褒めてくれちゃって・・・
 昔、月影先生の紅天女をみたこともあるって言ってたし
 お芝居が好きなのね。きっと・・・」

従者に支えられ黒塗りの高級車に乗り込む老人。
大都芸能の速水会長であることに気づいた報道陣。
足が悪くて現役を退いてからは滅多に表にでなくなっているそうである。
その大物をただの芝居好きのおっさんと思っているマヤ。

楽屋ではミーティング開始。
無言で一同の前を、タバコを吸いながら歩く黒沼先生。
緊張が走る。

「みんなご苦労だった。なかなかよかったぞ今日の芝居。」

気が抜ける一同。

「だが前にも言ったようにこの芝居はこれからやろうとしていることの基本だ。
 以前から稽古してもらっていた演技を生かして、これから新しい芝居をつくりあげる。
 セリフはそのまま。演技だけが変わる。
 もうひとつの忘れられた荒野だ。」

「もう一つの忘れられた荒野・・・」

「ではこれより稽古に入る!位置について!」

鬼才黒沼龍三。本番終演直後にも関わらず稽古開始。
演者の大半が素人ということを忘れているようである。

 

「本当に驚いてしまいましたわ。あの狼少女には。
 こちらを向いて吠えた時には私本当に飛び上がってしまいましたのよ。
 本気で噛まれるんじゃないかと思わず席を立ちかけましたわ。」

こちらは豪華ディナー中の速水真澄と紫織様。
心の奥底に引っかかる何かの正体を突き止めるために
「忘れられた荒野」観劇に行ったのだが、
すっかりマヤのファンになってしまったよう。

「あの北島マヤという少女がこれほどの女優とは思っていませんでしたわ」

「そうですね。天性の女優ですよ。」

「女優として興味がおありになるのね?」

気になるあまりおかしな質問をする。

「もちろんですよ。あの少女は紅天女の上演権がどうなるのか
 その鍵を握っているのですからね。」

「紅天女・・・あの演劇界幻の名作という・・・
 祖父から聞きましたわ。
 真澄様のお義父様は、大都で紅天女を上演しようと随分苦労なさったとか。
 でもどうしてもかなえられなかったのだとききました
 未だに上演することを夢見ていらっしゃるなんて大変な情熱ですわ。
 紅天女を上演しなくても大都芸能は他にも名作をたくさん手がけていらっしゃるのに・・・」

「紫織さん、義父は紅天女を上演するために大都芸能を興したんですよ。」

「紅天女を上演するために大都芸能を・・・・
 知らなかった、いったいなぜそれほどまでに紅天女を・・・」

速水親子の紅天女への異常な執着を知り青ざめる紫織様
そんな彼女の反応に気づかず、速水真澄には電話の取り次ぎが。
席から離れた電話にて仕事のお話中。

「なに!月影千草が東京に出て来ている!?
 紅天女上演のための準備をしていると!?
 スポンサーを見つけただと?
 何をしていたんだ!あれほど月影千草を見張っていろといったろ!
 どうして事前に防げなかったんだ!」

声を荒げる速水真澄。会話の内容丸聞こえである
しかし月影先生てっきりマヤの芝居を観に来たのかと思いきや
本題は紅天女の準備だったようである。
隠密行動の様子もなく普通に芝居観てましたけど、
そら速水真澄も怒るわ。

「どんなことをしてもかまわん。その話は潰せ・・・いいな!」

電話を叩っ切る速水真澄とその異常な様子に驚く紫織様。

「月影千草・・・
 芝居の上演権の一つや二つ相手があの人でなければもうとっくに手に入れていた・・・
 そうだ・・・紅天女のあの人でなければ・・・な。
 紅天女、必ず俺のものにしてみせる・・・この俺の・・・
 そして上演してみせる・・・!義父ではなくこの俺が・・・この手でだ!」

白目をむいて紅天女への野心を燃やす速水真澄。
その一部始終を紫織様がみている。

「真澄様・・・なんてこわい目・・・
 こんな表情は初めて・・・
 紅天女・・・あなたもお義父様もなぜそう紅天女にこだわるのですか?
 あなたにとって紅天女とはいったいなんなのです!?」

 

ちゅうわけで今回。
もう一つの「忘れられた荒野」に向けて動き出したマヤたちと
それを取り巻く速水父子の話。

かつて紅天女を上演するために大都芸能を興し、一代で会社を発展させた速水会長だが
もうマヤの芝居を見て喜ぶ祖父のようになっている。
そしてデート中にも関わらず電話で激怒し、その様子を恐れられる速水真澄。
速水父子と紅天女の因縁、そこまでこだわるその理由は今後語られるが、

本当にこの人は「結果を考えずに行動する方ではない」のだろうか。
デートの最中に彼女を思い切り恐怖させている。
紫織様はせっかくマヤの芝居を見て心の中の闇を9割ほど取り除いたにも関わらず
次なる疑問がまた彼女を不安にさせる。

しかし紫織様、なんだかかわいそうである。
日本財界を支配する鷹宮家の孫娘ながら
日常生活に支障をきたすほど虚弱。友達も少ない。
外に出ることもあまりなく、若いのになかなか枯れた生活を送っている。

婚約者のロリコン疑惑、婚約者父子の異常な執着、
そして最近気付きつつある婚約者の二面性。

この人はマヤの母、北島ハルさんの次くらいにかわいそうである。

つづく。

 - あらすじ・ネタバレ注意, 第33巻・紫の影(6)