【ネタバレ注意】ガラスの仮面第33巻その⑦【紅天女のふるさとへ・・・!】

   

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テレビの画面に映し出されたのは雄叫びをあげた狼少女ジェーン。

「アカデミー芸術祭ニュース
次の話題は黒沼龍三演出による忘れられた荒野です。
同じ脚本でありながら毎回違った芝居を見せるこの舞台
この芸術祭一番の関心を集めています。」

こんなピンポイントのニュース、他に話題があるのだろうか。

  • 1回目と芝居がかわっていて面白かった
  • 別の芝居見てるみたいだった
  • 自分が客じゃなくて芝居の中の人になったみたいで不思議な気分
  • 狼少女が最高!
  • 足元に来た時なんか悲鳴あげちゃっった
  • 本物かと思っちゃったわ

劇場に足を運んだ観客からは次々と絶賛コメントが。

演劇界からも
宇能重吉
滝川治
姫川歌子
薬所丸ひろ子

といった著名人や重鎮が劇場へ足を運んでいる。

「一つの芝居をどこまで変化させて見せられるか
可能性に挑戦したいと思っています
今日はその2回目ですが時間と体力の許す限り
新しい芝居を生み出して生きたいと思っています。」

黒沼先生も珍しく丁寧に饒舌。
そして再度画面に映し出されたジェーンの芝居。
雨月会館前は大行列で
何度も違った芝居を見にくるリピーターが多い。

このニュースはアカデミー協会で眺める実行委員たち。

「芝居の可能性の挑戦・・・か
さすが黒沼くんだの。」

理事長はじめ委員たちも注目する。

そしてもう一人。
自宅でテレビを見ていたのは速水英介氏。

「北島マヤ・・・か
おもしろい少女だ。
真澄が執着するだけはある
芝居をしている時のあのひたむきさ・・・
そっくりだ、若い頃の月影千草と・・・
千草・・・わしの紅天女・・・」

そんなこんなで話題の「忘れられた荒野」
芸術祭事務局へも推薦の手紙が殺到しているとのこと。
そしてその噂は病床のあの方の耳にも。

 

「奥様マヤさんの芝居が評判だそうですよ
新聞や雑誌の劇評でとても褒めてありました。
演劇に関心のない人まで観に行っているそうです」

「そう・・・」

「奥様・・・マヤさんは毎日ここへ見舞いに立ち寄ってくれるのに
奥様が一度も会おうとなさらないので心配しています。
一度くらい会ってあげれば喜ぶと思うのですが・・・」

源造さん、ほんまええ人や

「姫川亜弓様からも毎日のようにこんなにお見舞いの品が・・・
かわってお礼は申し上げておりますが亜弓様にもなにか一言・・・」

「源造!
今私はあの二人に会う気はありません・・・
もし会うとすればあの二人のどちらかが紅天女の資格を得た時か
あるいは二人が紅天女を競う立場になった時だけです。
それまでは余計な情けは無用です。」

「千草様・・・」

散々人の情けで生きているにも関わらず
お礼すら「余計な情け」と言い切る紅天女(初代)
さすが人間の心を持っていない。
源造さんもうっすら引いている。

「先生・・・あとどれくらいですか?」

「なにがです?」

「わたしの寿命ですわ。
あと一年は持ちますの?」

ギクリとなる医師、看護師、源造さん。

「な・・・何をおっしゃるんです月影さん
手術の経過も順調だしもうすぐよくなりますよ」

「100まで長生きできますよ」

取り繕う一同を見つめる月影先生。

「芝居が下手ねお医者様
わかっているわわたしの生命はもうそんなに長くない・・・」

医療が専門の医師の芝居にダメ出しする伝説の女優。
そらこの前三途の川渡ったのだから長くないに決まっとる

「手術が終わった後の源造の異常なまでの気の遣いようや
不自然な明るさをみていればわかる・・・
一年・・・せめてあと一年は生きていたい・・・!
新しい紅天女が生まれるまでは・・・!」

これだけ源造さんを筆頭にいろんな人に気を遣わせているのに
紅天女のことばかり考えている大女優である。

 

そしてその頃、某所のパーティー会場。
毎回変わる芝居や狼少女の演技、
そして何度も見に行った、私は立ち見だったなど
「忘れられた荒野」の話題で持ちきり。

「なんなのよいったい・・・!
芸術祭の話題はみんな忘れられた荒野のことばかり・・・
こんなことって・・・!
こんなことって・・・!」

カクテルグラスを握りしめて怒りと屈辱に震えているのは
円城寺まどかさん。
この人が主役のパーティーでもなかろうに
やはり大女優という生き物は常にこんな感じらしい。

 

連日大盛況の劇場で躍動するマヤ。

「おわる・・・!おわる・・・!
もうすぐおわる
忘れられた荒野が
狼少女ジェーンの日々が・・・
やがておわる・・・!
あたしはジェーン!狼少女・・・!」

そして無事迎えた千秋楽。
アカデミー芸術祭も終了したのであった。

 

そして病床の月影先生
窓から外を見る。

「どうかなさいましたか?奥様」

「源造、いいえなんでもないわ
紅天女のことを考えていただけ
そんな心配そうな顔をしなくても大丈夫よ。
わたしは死なないわ源造。
紅天女を育てるまではね。
やっと決心がついたわ・・・!」

 

そして唐突に現れる演劇協会理事長

「そうですか
やっと決心がつきましたか月影さん」

「ええ理事長。」

「それがいい。いまのあなたにはそうするのが一番いい。
紅天女は全日本演劇協会が大事に守りますよ。」

「よろしくお願いいたします。」

「それでどうするんだね?月影さんこれから」

「私の東京での役目は終わりましたわ。」

月影先生の決心とはなんなのか。
そして夜中。

「一蓮・・・
かつてあなたは私に生命を与えてくれた・・・
私に演劇を教えてくれた時と
紅天女の役を与えてくれた時と・・・
一蓮・・・決して結ばれることのなかったあなた・・・・
けれど・・・
紅天女を演じている時どれほど私は嬉しかったことか・・
あなたの魂と私の生命が一つになって
舞台の上で紅天女が生まれたのです・・・
一蓮・・・舞台の上であなたと私はしっかり結ばれていたのです・・・」

長い長い独り言を言いながら支度すると
部屋の片隅で寝ている源造さんを起こす。

「奥さま!その姿は・・・!

「帰りましょう源造
紅天女のふるさとへ・・・!」

「奥様・・・!」

これまで大女優のわがままに散々付き合わされて来た源造さんも驚き。
死にかけた病人が勝手に退院、しかも深夜。

「一蓮・・・
私にもう一度力を与えてちょうだい・・・
生きる力を・・・今しばらく私に生きる力を・・・!」

今度はあの世の尾崎一蓮に頼みごと。

「紅天女がある限りあなたの魂は舞台の上で生き続ける・・・
あなたの魂と私の生命がひとつになった紅天女・・
待っててちょうだい一蓮・・・
きっと素晴らしい紅天女を生み出してみせる・・・
紅天女に永遠の生命を与えてみせる・・・」

 

そして翌朝、見舞いに来たマヤたちもドン引き。

「月影さんは紅天女のふるさとへ帰られたのじゃ・・
今朝早くわしの家に立ち寄って手紙を届けられての。」

先生の行方と紅天女を教えるよう理事長を問い詰めるマヤ。

「今はまだ教えられん。これは月影さんの頼みなんじゃ。
芸術祭の発表の後じゃ・・・」

「発表の後・・・!」

「紅天女の資格を得た者にだけ居どころを明かすことになっている・・・
亜弓さん一人か、あるいはあんたと二人か・・・
それまで月影さんは紅天女のふるさとで待つそうじゃ・・・」

「紅天女の資格を得た者だけが紅天女のふるさとへ・・・
月影先生・・・」

その情報は姫川亜弓の元へも。

「そう・・・資格を得た者だけが
紅天女のふるさとへ行けるというのね。
紅天女のふるさと・・・」

そしてアカデミー芸術祭受賞発表の日が近づいていた。

 

ちゅうわけで今回。
大女優自由すぎ。

勝手に上京していろいろ画策した挙句路上で倒れ、
緊急入院&手術、そして三途の川を渡りかけるも
弟子たちの呼ぶ声で一命を取り留め意識を取り戻した。

にも関わらず弟子たちに会うことはせず
「余計な情けは無用」といい
そして深夜に勝手に退院する。

今回のこの医療費は誰持ちなのだろう。

しかし真に恐るべきは理事長。
このわがままの塊の大女優からも一目置かれ

「ようやく決心なさったか」と促し
演劇界幻の名作「紅天女」を
全日本演劇協会仕切りにしてしまう手腕。

速水真澄よりも数倍やり手である。

つづく。

 - あらすじ・ネタバレ注意, 第33巻・紫の影(6)