【ネタバレ注意】ガラスの仮面第33巻その⑧【あなただったんですか・・・!】

      2021/11/21

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アパートに黒沼先生から電話が入った。
マヤの演じた狼少女ジェーンが
アカデミー芸術祭の主演女優賞
ならびに全日本演劇協会最優秀演技賞にノミネートされたのだ

そして桜小路優は特別優秀新人賞、
黒沼先生は演出賞候補にあがっているらしい。

「うそみたい・・・可能性が生まれた
 紅天女への可能性が・・・!」

 

そして発表当日、
黒沼先生や桜小路君と受賞発表会場へやって来たマヤ。

「アカデミー芸術祭・・・
 これで全てが決まる・・・
 紅天女を亜弓さんと競えるか
 もしくはあきらめることになるか・・・」

月影先生の出した条件は

「北島マヤが姫川亜弓と同じ芸術大賞か
 もしくはそれと同格の
 全日本演劇協会の最優秀演技賞を獲れなければ
 紅天女の上演権は姫川亜弓に譲るものとする。
 もし賞を獲ることができたら
 北島マヤと姫川亜弓の両名に紅天女を競わせたのち
 どちらか一方に決定したい」

というものである。

会場では映画部門の受賞が発表されている
そしてマヤの目線の先には姫川亜弓。
前回の大賞受賞者だが、今回も何かにノミネートされているのだろうか。
それともタイトルホルダーは当然のように参加できるのだろうか。

「亜弓さん・・・
 紅天女・・・長いあいだの夢だったわ・・・
 いつか紅天女を演れるそんな女優になりたい・・・
 その思いがあたしをここまで引っ張ってきた・・・
 紅天女に向かって生きてきた・・」

そしてもし賞が取れなかった時のことを考えて恐ろしくなるマヤ。
自身の夢が潰えると同時に、ライバルが紅天女になる。
そのとき正気でいられるか、泣かずにいよう
そしてそのときは亜弓さんに笑っておめでとうと言ってあげよう
と決意する

これまで紅天女を目指してきたことは無駄ではなく
すべてが自身の中で育っている。
何より自分は芝居が好き
自分にできることがあるのも
舞台の上で別の人生を生きることができるのも
全て芝居のおかげある。
結果にかかわらずこの先も女優として生き続ける決意をするのだった
そして運命を待つその足が震える。

「マヤちゃん・・・」

そんなマヤを見て優しく肩に手を添える桜小路君。
そしてその様子を遠くで見つめる速水真澄。

「マヤ・・・
 こんなとき俺はどうしてやることもできない。
 肩を抱いてやることも励ましてやることも
 こうやって見つめるだけだ・・・」

いやいや肩を抱いたらあかんけど
励ますことはできるやろ

「ただ結果がどうなろうともこれだけは知っておいてほしい。
 俺の中の紫のバラは枯れることはない・・・!
 これからもずっと・・・お前が舞台に立ち続ける限り・・・」

なんか名言風に言ってはいるが
これからもこっそり愛しているということか。

そして演劇部門の発表。

「舞台美術賞 大沢事務所制作 イサドラ!
 脚本賞 大沢事務所 イサドラ!」

星歌劇団の人気スター・円城寺まどかさんの退団後初の公演
注目を浴び満を持しての布陣で臨んだ大沢事務所
念願の受賞である。

「つづきまして特別新人賞
 忘れられた荒野 スチュワート役 桜小路優」

「演出賞 忘れられた荒野 黒沼龍三」

「そして優秀作品賞 忘れられた荒野」

忘れれた荒野、怒涛の三部門受賞に会場が湧き上がる。

「主演男優賞 宝竹社制作 リア王 丹波一生」

誰だこいつは

「主演女優賞 大沢事務所 伊佐ドラ! 円城寺まどか」

「主演女優賞・・・まずは及第点
 あとは芸術大賞と最優秀演技賞・・・・
 どちらか一つだけでも・・・」

ここまでは想定内の円城寺さん

「おちた・・・主演女優賞・・・」

ノミネートされた主演女優賞に落ちたマヤ。
そしてアカデミー芸術大賞は
劇団隼人「哀愁」の田上丈

こいつも誰だ。

「全日本演劇協会最優秀演技賞!
 忘れられた荒野 狼少女ジェーン役 北島マヤ!」

拍手と大歓声に包まれるマヤ。

「うそ・・・本当なの?夢みたい
 夢ならどうかさめないで・・・
 紅天女を演れる・・・亜弓さんと競える・・・!」

そして受賞のマヤを笑顔と拍手で讃える姫川亜弓。
この辺りの高潔さが彼女の魅力である。
そして悔しさを隠せない円城寺まどかさん。
忘れられた荒野の稽古を観て本番も何度も観て
散々ギャフンと言わされてきたのに期待を持っていたのか。

「アカデミー芸術祭審査委員会ならびに
 全日本演劇協会は以上の作品や方々に賞を授与することにいたしました。
 特に黒沼龍三氏演出の忘れられた荒野は話題を呼び注目を集めました。
 最優秀演技賞は全日本演劇協会員の圧倒的な票を集め
 狼少女ジェーンを演った北島マヤに決定いたしました。」

表彰の総括をする理事長。

「なおこの度の芸術祭でかねてより関心が持たれていた
 紅天女のことでありますが
 北島マヤが最優秀演技賞を獲得することになり
 上演権を持つ月影千草氏の意向により
 姫川亜弓北島マヤの二人を競わせることになりました。
 演劇界幻の名作紅天女の新しい誕生を
 全日本演劇協会は見守っていきたいと思っております。
 なお月影千草氏の希望で制作は全日本演劇協会が
 責任を持って管理することとなりました。」

驚きの声が上がる。

「全日本演劇協会が制作の管理だと・・・?
 どういうことだ?」

悔しさを隠せないのは小野寺先生。

「どういうことだね真澄君これはいったい・・!」

「紅天女を独占させないよう月影千草が手を打ったのでしょう。
 全日本演劇協会を味方に引き入れるとは考えたものだ。
 劇場、興行社、演出家やその他の配役などすべて
 全日本演劇協会の許可がないと認められないということです。」

「みろ!ライバル宝竹社の連中は青ざめてるぞ!」

「独占しようと躍起になってましたからね。」

「どうしたんだね?真澄君
 えらい落ち着き払ってるじゃないか。
 君こそ独占しようと何年も頑張っておったのに・・・」

「月影千草の動きは逐一見張らせていました。
 理事長との親密な接近ぶり、
 こう出る予想はついていましたよ。」

月影先生の動向を部下が見逃し怒声を浴びせ
その鬼気迫る様を婚約者に見られていたのだが。

「で、では何か考えがあるのかね?
 大都芸能が独占できるような・・・」

「ええ・・・」

不敵な笑みを浮かべさっていく速水真澄と
その後ろ姿を見送る小野寺先生。

「真澄君・・・何を考えているのだ
 君は一体・・・!」

作中最強の策謀家にして演出しない演出家の小野寺先生。
彼にすら読めない速水真澄の狙いとは一体??

「亜弓君、マヤ君、
 いいか君達にはこれから紅天女のふるさとへ行ってもらう」

「紅天女のふるさと?」

そしておもむろに紅天女への道を仕切り出す全日本演劇協会理事長。
この爺さんも策士である。

「そうだ、そこで月影先生が君達二人を待っている。
 紅天女の資格を得た者だけが来るようにと言い遣っているのだ。
 そこで月影先生に会ってくるがいい。
 紅天女の全てを教わってくるがいい。」

「紅天女の全てを・・・月影先生・・・」

そして返事をした瞬間、先ほどまでの友好ムードが一変、
二人の間に火花が散る。

「やあチビちゃん。1%の可能性への挑戦
 見事果たせたねおめでとう。
 いよいよ紅天女へ挑戦か。
 君には紅天女よりも狼少女の方が似合っていると思うんだがな。」

「お褒めいただいてありがとうございます速水社長。
 なんでしたら今狼少女になって噛み付いてあげましょうか」

「それは御免被る。
 狼少女ごっこはもう懲りたよ。
 君の演技は時々ほんものになるからな。
 ともあれ未来の紅天女へ乾杯!」

ご満悦の速水真澄。白々しい。
そして散々マヤをいじり倒してなおご満悦。
怒り狂うマヤのもとに届けられたのは紫のバラ。

「受賞おめでとうございます。
 いよいよ紅天女ですね頑張ってください。
 いつもあなたを見守っています。」

「すごい、どうしてこんなに早く受賞したことを知ってるんだろう?
 君の紫のバラの人は・・・・」

「ずっと気にしてくれていたんだわあたしのこと・・・
 今日の日のこと・・・紫のバラの人・・・」

変わらず見守ってくれる紫野郎に感謝するマヤ。

「忘れられて荒野でのあなたの狼少女ジェーンは素敵でした。
 スチュワートの青いスカーフを握りしめながら
 人間に目覚めていく場面は感動的でした。」

「えっ!?スチュワートの青いスカーフ?
 初日しか使っていないのに・・・
あとはずっと赤いスカーフだったわ

 どうしてこの人がそれを・・・
 それを知っているのは
 初日・・・!
 あの台風の日
 あの時場内にいたのは・・・」

「俺は約束は守る男だ!」
「紫のバラのひと、あのかたは約束を守られる方です」

速水真澄と聖さんの言葉がプレイバックする。

「たった一人の観客・・・!速水さん・・・!」

思わずバラの花束を落とすマヤ。
視線の先には関係者と談笑する速水真澄。

「名前も明かさず姿も見せず
 ずっと影から見守って励ましてくれた足長おじさん・・・
 紫のバラのひと・・・
 まさか・・・まさか速水さん!
 そんなバカな・・・
 意地悪で憎らしくていつもあたしのことバカにしていて
 仕事の鬼で冷血漢・・・それなのに・・・
 紫のバラのひと・・・
 あなただったんですか・・・!速水さん・・・!」

 

ちゅうわけで今回。
やってしまいましたな紫野郎。
ただこればかりは彼を責められない。
スカーフの色が変わったのは不可抗力。
まさか青いものが赤いものに変わるなんて思わない。
それほどスカーフを握りしめる芝居が印象的であったのだろう。

 

改めて読んで見て気になったというか混同していたのは
「アカデミー芸術祭」と「全日本演劇協会」の違いである。

全日本演劇協会はその名の通り国内で権威のある演劇の組織。
理事長と月影先生は古くからの懇意らしいところから
その歴史がうかがえる。

そしてアカデミー芸術祭は、ある期間開催されている
映画や舞台など芸術部門のキャンペーンのようなものか。
参加が認められた団体や出し物から、選出され授与される。

姫川亜弓が前年「ジュリエット」で受賞したのはアカデミー芸術祭大賞
そしてマヤが紅天女候補に残る条件が
アカデミー芸術祭大賞もしくは同等の
全日本演劇協会最優秀演技賞

つまりアカデミー芸術祭の審査員には全日本演劇協会の理事長も名を連ねているが
アカデミー芸術祭=全日本演劇協会ではないということである。
ややこしい。

ただ一つ言えることは極めて忖度と利権に満ちた団体と思われる。
1団体につき1演目、というのも公平なようで公平でないし
参加から外れた「忘れられた荒野」が注目され参加を認めるよう世間の圧を受けて
急遽参加を認めたり、
主演女優賞が円城寺まどかで最優秀演技賞がマヤというのもなんか腑に落ちない。
まあこの二つの賞は審査母体がイコールではないのだが。

そしてしれっと紅天女の今後に絶大な権限を持ってしまうあたり
とてもとても闇を感じる。

34巻につづく。

 - あらすじ・ネタバレ注意, 第33巻・紫の影(6)