ガラスの仮面のおっさん

アラフォーのおっさんがガラスの仮面を読んで聞かせる

「ゼロへの逃走」ガラスの仮面・劇中作品データ

      2019/11/09

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劇場映画
出演
誘拐犯役:堀口武士
金持ちの令嬢役:姫川亜弓

親の七光りを嫌い、実力の世界を愛する姫川亜弓(小学生5年)
運動会を皮切りに勉強にスポーツに習い事に全力を尽くす。
芝居の魅力にとりつかれ今度は劇場映画に主要キャストで出演。
これまでには、父姫川貢監督の作品に数本出演したことはあったが
実力志向となった姫川亜弓にとっては実質初出演であった。

あらすじ

誘拐犯が金持ちの令嬢を誘拐する。
逃げようとする令嬢に噛まれる。
ほか不明

七光りなのか

劇団オンディーヌの発表会で大絶賛された姫川亜弓。
芝居の魅力にとりつかれ日々稽古に励み、
そして映画の主要キャストとして出演することとなった。
しかしここまでは親の七光りといっても差し支えないであろう。

大映画監督と大女優の両親を持つ姫川亜弓は話題作りにはうってつけ。
実際主演の堀口武士も、話題作りのためにキャスティングされた素人同然だと思っていたのであった。

発揮される女優魂

しかし堀口武士の見立ては大外れであった。

「いいかい。俺は誘拐犯なんだからね。
 本番になったら手加減しないからそのつもりでいてくれたまえ。」

「はい。わたしも手加減しませんから。」

素人の小学生相手の芝居かとうんざりしていた堀川武士はこの言葉の意味を後になって知る。
誘拐された令嬢が逃げ出そうとするシーン、
彼は姫川亜弓に思い切り足を噛まれるという台本にない演技をぶつけられる。

「なんて眼だ・・・まるで小さな獣の眼だ
 あなどれん・・・こいつは大した女優だぜ・・・」

姫川亜弓の細部にわたるまでの芝居が映画に緊張感をもたらし、
あなどれないどころか、堀口武士はクランクアップまで圧倒されっぱなしだったのである。

姫川亜弓の哀愁

この映画が評判になり、一躍人気子役となった姫川亜弓。
特別賞も受賞し、以来出演依頼が殺到、スター街道まっしぐら。
そして圧倒されっぱなしだった堀口武士も、主演男優賞を受賞。
堀口武士の口からは、姫川亜弓のおかげでとれたような雰囲気である。

しかし姫川亜弓、この映画ではまさに天才といっていい演技を披露。
犯人を憎む眼、恐れる眼、怯える表情、緊張した態度、
追い詰められた少女の心理が全身に現れ、
足を噛んだ瞬間などはその真骨頂であった。
とはいえ本格的な芝居経験は一二年、
現在ほどの技術や経験もないままいわば本能で演技し、周囲を圧倒。
つまり、この映画の時点での姫川亜弓の芝居は、マヤの駆け出しの頃に似ているとも言える。

しかしこの映画を皮切りに出演依頼は殺到、
そして姫川亜弓も自己研鑽を怠らず稽古に稽古を重ね、
日舞やバレエなどで肉体を鍛え、表現力を磨き、
技術と経験の宝庫とかした結果、
本能のまま演じるマヤに圧倒されるという悲しい現状である。

稽古すればするほど技術に走り、本能を忘れ、
結果下手になってしまうのだろうか。
お芝居って奥が深い。

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